土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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マクロス・クォーターのブリッジには、艦長一名、操舵士一名、オペレーター三名しかいない。オブザーバーとして強引に乗り込んだキャサリン・グラスを加えても六名。
これはIRMA、すなわち情報分野における軍事革命の結果で、各部署における高速の意思決定を行うために、あえて人間の数を減らした結果である。
「三時方向の敵に向け、主砲、斉射三連!」
「了解、ボス!」
巌のようなジェフリー・ワイルダー艦長の号令一下、黒人の巨漢、ボビー・マルゴがバジュラの進路に割って入るコースを取る。
「てぇえっっっ!」
ブリッジの前方に設置された、連装主砲が火を噴いた。
プラズマの火線が、全長2キロメートルにも及ぶ、巨大なバジュラ空母艦、通称“ナイト”を貫通し、次々と爆発させる。
「よっしゃあ!三隻轟沈!」
(すごい……)
キャシーは息を飲んでいた。
新統合軍の戦いは、AIに任せたもので、軍人のほとんどは、AI兵器に出撃を指示するオペレーターでしかない。それが、AIを無力化するバジュラたちの前に、緒戦で惨敗を喫する原因となった。
だが、目の前にいる男たち、女たちは違う。
自分の生まれ持った力を、天然自然の神経と肉体を信じている。だから、てらいもなく、死地に飛び込んでいくことができる。
『オレは、自分の目で見たものしか信じない』
そう言ったオズマの言葉の意味が、わかりかけてきた。
そんな、気がした。
「行くぞ、ミシェル!フォーメーション、M・M・ジーナス!」
「OK!」
難民船団に食らいつくコースを取った一群の大型バジュラを、クランたちピクシー小隊が、その機動性と火力で拘束する。
「さすがだ、クラン・クラン」
そこを、バドロイドに変形し、機体の余剰出力を電磁加速(レール)ライフルの威力に回した狙撃仕様のVF-25が狙撃するのである。おまけに、狙撃手はミシェル・ブラン。外れる理由がない。
あっというまに、八匹のバジュラが宙に散った。
「よし、このままこの宙域を支えるぞ、ミシェル!」
「ああ!」
青い鋼鉄の巨人に乗る少年と、赤い装甲服をまとった巨人の乙女。
ふたりが、ふたりの年齢に見合った、同じ背丈で過ごせる場所は、ここにしかなかった。
戦場しか、なかった。
劇場版『マクロスフロンティア イツワリノウタヒメ』小説(上)第6章 乙女座(ヴァルゴ)〜オベリスク〜 本文 より
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