土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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開くと、「ほんまに、すみません。と思ってるなら、そのまま忘れてくれるのが優しさやで。聞こえてなかったと信じて明日から生きて行こうと思ってたのに。三畳一間の救世主」という文面が返ってきた。難しい所である。神谷さんが、その後にどのような流れを計算していたのか知りたい所だが、確かに臨場感を失くした今の段階になって、真意を聞くのは野暮だろう。
僕には、神谷さんの考えそうなことはわかっても、神谷さんの考えることはわからなかった。自分の才能を越えるものは、そう簡単に想像できるものではない。神谷さんの発言を聞いた後で、手のうちを知ってると錯覚を起こしてるだけに過ぎない。自分の肉が抉られた傷跡を見て、誰の太刀筋か判別出来ることを得意気に誇っても意味はない。僕は誰かに対して、それと同じ傷跡をつけることは不可能なのだ。なんと間抜けなことだろうか。
又吉直樹『火花』より
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