土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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「……兄は……シャアの動きはわからないんですか?」
「この戦いに彼の意思は見えません。どこかで我々のやっていることを見ている。そして、何かを考えている。そんなふうに思えます」
「時代を待っているのですか。兄らしい……」
セイラは苦笑した。
「……危険な気がしますね」
「概念だけのニュータイプなど、悲しいでしょうにね。なんで……」
「いや、彼はそれを嫌って、具体的な行動に移すでしょう。そういう男です」
「そんな兄は見たくありません。死んでくれれば……」
「なぜ?」
「兄はジオン・ズム・ダイクンの意志を継ぐことはできません。だから……」
「しかし……」
ブライトは何か言いたかったが、黙った。それ以上は兄と妹の問題かもしれないと思ったからだ。そして、ブライトはまた横を向いた。リィナは天を仰いでいた。固く閉ざされた港口のハッチの向こうに広がる漆黒の闇、その冷たい闇の中で戦う兄の姿を見ているのだろうか。リィナは身じろぎもしなかった。
「……こちらも兄と妹か……」
一人の妹は兄の死を願い、もう一人の妹は兄の無事を祈る。そのちがいはどこから来るのだろう。ブライトには、その答えは出せなかった。
アニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』小説 第二部 ニュータイプ 18 グレミーの反乱 本文 ブライト・ノア リィナ・アーシタ セイラ・マス より
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