[ML]　隣人は茜色の思い出を連れて

へ？……あぁ、コレ？久野さんこそ、よく覚えてますね。そんな細かいコトまで。（淡々と指摘する彼とは対照的に、キョトンと目を見開いて幾度か瞬きを繰り返し。少しの間を置いてから、ようやく何を指しているのか把握し自らの指で泣き黒子に触れ。驚きは隠せないまま、彼の記憶力の良さに感嘆の声をあげて。数分前は彼の事を思い出した勢いそのままに当時の呼び名が口をついて飛び出したが、一旦落ち着いてしまうと、自然と余所余所しく苗字に敬称が乗っかってしまい。小学校時代の感覚を取り戻せないからなのか、発する言葉も敬語交じりになりがち。しかし今はそんな事を気にかける余裕もないようで、玄関口で軽く手を招き「どうぞどうぞ、いらっしゃいませ」とこちらへ呼び寄せるので精一杯。彼を先導するように敷居を跨ぎ、リビングへと足を進めて）