ヌシ 2014-12-26 21:17:49 |
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ありがとうございます、(薄茶色の何処か懐かしさを覚える感触の絆創膏を上から意味も無くひと撫でして、救急箱を閉じる彼にごく落ち着き払った声色で礼を述べ。正面に腰掛け困ったように柔和に微笑む彼が、何に対してか、大して悪びれてないように聞こえるがそれでも謝罪の言葉を寄越すから、「いや、助かりました」とやや表情を緩めて返し。子供を相手に宥めでもしているかのような口調で、本人があまり気にしていないポイントに念押ししてくるのには漸く少し、はは、乾いた笑いを溢すことができて。簡単に傷を作った経緯を説明してやる。「随分放っておかれていたみたいで。…時間割の入れ替えで五限まで時間あるんで整理に充てます」、ラックの上から落ちて来たものを碌に見もせずにそのままにして出てきてしまった準備室を思うと弱弱しい溜め息が自ずと漏れ出て、奥歯を噛み締めるように苦笑し。と、相手からの申し出にンと一瞬何を指して言ったものか思考が宙に浮いてしまう。アニメや漫画の中でしか中々見ないような変人めいたゆるりふわりとした仕草が、意図してやっているのか天然なのかは判らないが、似合うとこの短い交流の間に知った男の肩越しに、しっかりとした洗面台と、今も使われているのかどうなのか自分には見当のつかない旧型の洗濯機を見つけて、ああ、と納得。汚れるものだと仕方なく使ったハンカチは、落ち着いたグレーベージュ地に青みがかったマットなグリーンの幅の広いタータンチェックの柔らかな麻生地のもので、実は気に入っていたのだ。「気が利きますね…、申し訳ないんですがお願いしても?」と再びそのハンカチを取り出せば控えめに差出して。その為の保健室でも、養護教員が男性だと女子生徒は恥ずかしがるだろうなあとふと思いつつ)
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