猫柳 2014-10-31 22:41:03 |
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《11》
「ねぇ典君!」
「…母さん、その呼び方やめてくれないか、良い加減。」
「あら、でも典君は典君でしょう? 小さいときは嫌がらなかったのに…。」
「歳を考えてくれ、僕はもう17だ。いつまでも子供じゃあない。」
この会話は一体何度繰り返してきただろう。恐らく今日で三回目ではないだろうか。
自分で言うのも何だが、僕の母は僕が大好きだ。
僕もそんな母が大好きだった。だが今僕は高校生。いつまでも甘えてはいられないし、甘える気もない。
母は僕をいつまでも子供だと思っているようで、小さい頃からずっと「典君」と呼んでくる。僕はそれが嫌で仕方がなく、母に直すよう言っているのだが、見ての通り、母は直す気など全くないようだ。
「…はぁ…。で、どうしたんだい?」
「お父さんがね、商店街の福引きでエジプト旅行へのチケットを当てたの! だからみんなで行こうって。」
「父さんが? 凄いな…んー、でもエジプトかぁ…。」
エジプトと聞いて思い浮かぶのはピラミッドぐらいで、あまり詳しくは知らない僕は、今一ピンと来なかった。
「ん、そうだね、そうしよう。」
この旅行で、エジプトをもっと深く知ることにしようか。
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