猫柳 2014-10-31 22:41:03 |
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《9》
「待ってよお父さん! 明日は約束が…! 明日の夕方はダメなの!?」
「…典明、今はそんな場合じゃあないことぐらいは解るだろう? 諦めなさい。」
承太郎との約束があることを告げる花京院。だが父親は、やはり許してはくれなかった。
「でも……っ。」
何とか粘ろうと言葉を探す花京院だったが、何も言えなくなり黙り込んでしまった。父親の言っていることが正論だということが、よく解っていたからだ。
「あなた、典君。車の準備ができましたよ。」
「あぁ、消防隊の方ともう少し話をしてから行くよ。…さ、典明、お前は先にお母さんと車に乗って待っていなさい。」
「…。」
野次馬を掻き分けていく父親の背を見送ったあと、花京院は車に乗り込んだ。
車は奇跡的に燃えておらず、傷一つなかった。
そして暫くすると父親が帰ってきて、車に乗り込む。
「おまたせ。よし、じゃあ行くぞ。」
母親がエンジンを掛け、アクセルを踏む。
車はのろのろ這うように動き、そして加速していく。
家がどんどん小さくなっていくのを車窓からぼんやり眺めながら花京院はぐっと唇を噛み締めた。
__ごめんね、承太郎くん。
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