ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
通報 |
王妃がICUに入ってから1週間が経とうとしていた。
術後の経過も順調だ。
しかし離宮では、王妃死亡説が流れていた。
王妃が鉄の箱の中に入り、いまだ出て来ないのは、王妃が死んだからだと噂が広まっている。
その噂は遠く離れた王宮にも届き、王様は気がきではなかった。
しかし、前回の皇后の事もあるので、心配ではあったが、鈴達の腕は信用していた。
あの時も、面会謝絶だと言うのを、無理に頼み込んで中に入れてもらった。
今までに見た事もない機械類が山の様にあり、それが患者の命を繋ぐ道具だと言っていたのだ。
そしてこの事は誰にも言ってはいけないと。
その言葉を思い出しながら、離宮から『無事』の便りが来るのを待っていたのである。
その一方で、後宮では側室たちが、次の王妃候補の事で盛り上がっていた。
我こそは次の王妃にと、周りに根回しをし始めている者も居た。
ある者は、皇子を産んだ私こそが次の王妃だと言い、またある者は、自分の寝所に一番通ってくれたので、私こそが次の王妃だと言う。
側室たちの醜い争いは、後宮を取り巻くどす黒い渦の様に広がっていく。
そんな中、第1皇子ソウレンが、母親である王妃の事を心配して、離宮に行って真相を確かめたいと、王様に願い出た。
この皇子は鈴達の事を知らない。
が、あまりにも心配をするので、王様は皇子に言った。
「大丈夫だ。王妃を診てくれているのは、ファンミンを治してくれた医者だ」
「ですが、父上。いまだ無事の知らせが来ないのはおかしいです!」
ソウレン皇子が声を大にして訴える。
そこへ、内管が文を持ってやって来た。
王様はその文を読むと、安堵の顔をする。
「ソウレン、王妃は無事だそうだ。
順調に回復してると、鷹便で文を持送って来た」
「それは本当ですね!?父上!」
「ああ」
「では、私がこの目で無事を確かめに行きとうございます」
「・・・・お前が行っても、はたして会えるかどうか・・・」
「それはどう言う意味でございますか」
「あの者達は頑固だぞ?」
そう言いながら、王様は少し口角を上げながら笑う。
トピック検索 |