ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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次の日、診療所の一行は、朝早くから準備に取り掛かっていた。
歩いて3日かかる距離だが、鈴達は車で飛んで行くつもりであった。
空から行けば、1時間もかからないだろう。
その為に、車の中を厳重に施錠し、勝手に中に入って行けないようにした。
みんなが乗る所は、運転席部分にある座席だ。
運転席とその横には、二人ほど乗れ、後部座席は2か所あるので、後部座席は詰めれば6人ずつ12人乗れる。
前と合わせても15人は乗れると言う代物だ。
前列には、運転手の鈴、助手席に和也とミャルが座り、中列には、ウンデグと両親、ホウミンと母親、それにお婆ちゃんが座る。
後部座席には、シュンイと友達親子、バジルの母親とお婆ちゃんが座る事になった。
ホウミンの子供とバジルの兄弟は、バジルと一緒に、2階部分にある談話室に連れて行かれた。
談話室には、絵本や落書き帳、クレヨンなどが置いてあり、子供たちが退屈しないように配慮されている。
バジルは、この車の中への出入りがある程度許されており、たまに夜遅くまで、この談話室で、鈴に勉強を教えてもらっている事もあるので慣れたものだ。
すると、いきなり天井から鈴の声が聞こえて来た。
「バジル、そこの壁に付いてる椅子を引き出してちょうだい」
バジルは、何処から声がしてくるのかキョロキョロしていたが、言われた通りに備え付けの椅子を壁から引き出した。
「出した?」
「出しました」
「それじゃあ、その椅子にみんなを座らせてちょうだい」
バジルは子供達を座らせると、鈴の言葉を待った。
「そうそう、言い忘れてたけど、あなた達の声は聞こえてるから、何かあったらすぐ
呼ぶのよ」
「はい!鈴先生!」
「準備が出来たら安全ベルトをしてあげてね。この間やり方を教えたでしょ?
出来る?」
「出来ます!」
「バジルは物覚えが早くて本当に助かるわぁ」
などと、他愛もない会話をした後、いよいよ出発の時間となる。
いまから出発をすれば、お昼ごろには着く予定だ。
「では、出発しま~す」
エンジンをかけ、飛行モードに切り替える。
すると、車は徐々に上昇をしはじめ、身体にGがかかる。
それと同時に、窓から見えていた景色が変化をもたらし、みんなが一斉に窓の外にくぎ付けだ。
これはいったいどうなっているのだと、驚きの声が上がる。
より一層驚いているのが、助手席に座っていたミャルだ。
フロントガラスから見える景色は、地上を離れ空に浮かび上がって行くように見えたからだ。
キャーキャー言いながら、隣の和也にしがみ付いて離れようとしない。
耳元で叫ばれるものだから、和也にとっては煩くてしょうがなかった。
「そんなに怖いならウンデグと変わるか?」
と、聞く。
しかしミャルは、それは嫌だと言う。
嫌だと言いながら騒ぐので、和也はうんざりしていたのであったが、ミャルにはそんな事は関係が無いかのようにしがみ付くのであった。
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