ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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川辺からゆっくりと水面に向かって動き出すと、車の両脇から大きな浮き輪の様な、細長い物が数本出てき、それはイカダのような形を取り、車両をガッチリと固定をする。
普段は排気口のマフラーとして機能している部分は、スクリューに早変わりをし、アクセルを踏むとプロペラが回り前進をすると言う物だ。
圭太と一緒に、ベッドに居た子供は、この箱の様な、家の様な物が、川の中に入り浮かんで進んでいる事に驚き、興奮をしていた。
川を上っている最中にも、幾つかの渡し船と遭遇するが、どれも子供の母親は乗ってはいない。
岸が近づき、対岸の渡し場が見えてきた頃、先頭の渡し船に追いつく。
船の中を双眼鏡で見渡すと、1人の女性がうつむき、その傍らでは、少し年配の女性が何やら慰めているようだった。
そこで鈴は、その船に近づき、うつむいている女性の顔を確かめる事にした。
車の窓を開け、その女性に声を掛ける。
「すみませ~ん。
そちらの船に、ソンギュンと言う子のお母さんは乗ってはいませんかぁ~?」
そう尋ねてみると、今までうつむいていた女性が顔を上げた。
その顔を見た鈴は、子供の母親だと言う事を確認し、子供の安否を告げる。
「ソンギュンのお母さんですか?
ソンギュンは無事ですよ。
岸に付いたらそこで待っててください。
お子さんを連れて行きますから」
母親は喜び、先ほどまで流していた悲しみの涙ではなく、嬉しい知らせの涙にくれるのであった。
鈴は岸から上がれそうな場所を選び、そこから車を陸に揚げ、子供を連れて母親が待つ渡し場に向かった。
そこで待っていたのは、母親だけではなく、大勢の野次馬たちも待ち構えている。
「おかあちゃん!」
「ソンギュン」
二人は抱き合い、子供の無事を確認した母親は、何度も頭を下げお礼の言葉を言ったのだった。
しかし、現代では普通の救命処置なのだが、この時代では、まだこのやり方は普及をしておらず、後々その事が災難をもたらすと言う事を、3人はまだ知らなかったのである・・・。
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