ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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「この患者は盲腸と言う病気で、このまま放って置くと盲腸が破裂して死にますよ」
「なんだ、その盲腸と言うのは」
医者らしき恰好をした男が質問してきた。
「盲腸とは、右下腹部にある虫垂です。
虫垂に異物が溜まると炎症が起き、 強い痛みを伴いますから、直ぐに切らないと
ならない病気です。
そのまま放って置くと、虫垂が破裂して死んでしまうんですよ」
「腹の中にある物を、どうやって切ると言うんだ」
「開腹手術をします」
「バカな・・・腹など切ったら死んでしまうに決まっている」
「死にはしませんよ。我々の技術ならば」
「そんな事があるものか!」
押し問答である。
「このままこの人を放って置けば、確実にこの人は死ぬでしょう。
それは貴方もお分かりではありませんか?」
「・・・・・・・・・・・・・」
この医者は、この症状が出た人は、皆長い事は持たないと言う事を知っていた。
そしてここで、和也は鈴の真似をして、あの言葉を言ってみる事にする。
「貴方は運が良い。俺達の最新医術をその目で見れるんだからな。
この医術は、この鮮朝国では誰も受けた事が無いし、誰も見た事が無い幻の医術だ」
「・・・・・・・・・・・・」
「どうする?見たくはないか?西の最新医術を」
医者はゴクリと生唾を1つ呑み込むと、静かに答えた。
「・・・・・・見てみたい」
「なら直ぐに手術の準備だ。患者を別の部屋に移してくれ」
和也と圭太、医者と役人が別の部屋に移動をし、麻酔を打って眠らせた後に手術が開始された。
「それは?」
「これは麻酔と言う物で、深い眠りに落とす事が出来て、手術中の痛みは全く感じなく
なります」
「ほぅ~・・・便利なものだな・・・」
お腹にメスを入れると
「それは小刀か?」
「メスと言う物で、手術の時には必ず使う小刀の様な物ですね」
などと、圭太が分かり易く説明をしながら、和也が手術をして見せていた。
「はい。これで終了です」
「もう終わったのか・・・意外と簡単に出来る物なんだな」
「簡単そうに見えますけど、切る深さや角度を間違うと、殺してしまいますよ?」
「・・・・・そうなのか・・」
術後直ぐに患者は目を覚まし、さっきまでの痛みが消えている事と、生きている事に感謝をし、すぐさま動こうとしたが、切ったばかりでは痛くて動けないでいた。
「あまり動かないでくださいね。傷口が開きますから」
圭太が優しく声を掛けた。
手術を見学していた医者は、腹を切られても生きている事と、今まで見た事も聞いた事もない医術を、目の前で披露された驚きに興奮していた。
そしてその医者に、患者の抗生物質と解熱剤を渡し、使い方を教えてから帰って行ったのだった。
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