ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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一方鈴達は、ヨンギルの体を綺麗に消毒をし、麻酔が効いてきた頃を見計らい手術に取り掛かる。
今回の執刀医は圭太だ。
今まで培ってきたERでの腕が試される。
和也はレントゲンを撮り、症状を的確に診断する。
鈴はそれらの情報を元に、使用するであろうと思われる機材を準備した。
足の拗ね辺りの骨が粉砕して再起不能だ。
いや、細胞再生薬を使えば骨は復活をするが、それには半年と言う時間がかかる。
そんなに付き合ってはいられない。
したがって、合金を埋め込んで骨と骨を連結するしかないようだ。
合金を埋め込み、ボルトで留め、切れた血管と筋を繋ぎ合わせる。
そうする事により、全速力で走る事は不可能だが、日常生活には何の問題も生じないくらいの回復はする。
もちろん今まで通り仕事も出来るのだ。
2時間後、圭太が血まみれの手術着を着たまま外に出て来た。
その姿を見て、待って居た人達は驚きを隠せない。
いったい中で何があったんだと不安になる。
「ヨンギルは・・・ヨンギルは無事なんですか?」
母親が泣きながら訴えて来た。
「無事ですよ。でも今は眠っているので、会えるのはお母さん1人だけです」
「お願いします。会わせてください」
本当に無事かどうか会うまでは信じられないようだ。
それもそのはずだ。
息子を連れて行った人が、出て来たと思ったら血まみれなのだから。
「では、僕たちの言う事をちゃんと聞いてくれると約束をするのでしたら、中に
お連れしますが」
母親は何度も頷き、圭太に連れられて車両の中に入って行った。
車両に入ると、まずはシャワーで身体を綺麗に洗われる。
その介添えは鈴が担当し、着る物も真新しい患者用の寝巻を着せられ、その後ヨンギルが寝かせられている2階にあるベッドまで連れて行くと、スヤスヤと寝息を立てている我が子を見たとたんに泣き崩れてしまい、ヨンギルの体に覆い被さった。
「今は安静にせてないといけないので、目が覚めてからにしてくださいね」
鈴がそう声を掛けると、母親は素直にその言葉に従い体を離し、目が覚めるまで付き添っていていいと言われたので、母親はその場で待つ事にした。
ヨンギルは、30分ほどで目を覚まし、目の前で泣いている母親を見るが、何故泣いているのかが理解できていなかった。
「そう言えば俺・・・木の下敷きになったはずじゃ・・・」
「そうよ。ヨンギルは木の下敷きになって、もうダメだと思った時に、こちらのお医者様
達が助けてくれたんだよ」
「・・・俺の足は?」
「ちゃんと付いてるよ」
ヨンギルは驚いた顔をする。
今まで、あのような事故があれば、否応なしに時間と共に足が腐りはじめ、切断するからだ。
それも、医者に切断をしてもらうのではなく、仲間内の木こりにだ。
その足が未だにくっ付いている事は、驚きの他の何者でもない。
喜んでいる親子とは裏腹に、3人のお気持ちは
― はぁ・・・これで2週間は確実だな(だわ) ― であった。
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