ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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二日ほど鈴達はその場で診療をしていたが、他の代替え人の健康状態の方が気になっていた。
そこで、3日目からは、車両で診療するのを午前中だけとし、午後からは害替え人の住む集落の方におもむくのであった。
ここの集落もやはり前回の集落と同じで、皆ボロ小屋に住んではいたが、健康状態は診た限り悪そうではない。
この分ならここの人達は大丈夫だろうと帰ろうとした時の事だ。
いきなり大声が聞こえる。
「大変だああああああ!ヨンギルが木の下敷きになった!
誰か一緒に来てくれ!」
そこに居た数人の男たちが、慌てて呼びに来た男に付いて行った。
そして鈴達もその後に付いて行くと、大木の下敷きになって、足を挟まれている少年がそこに倒れていた。
30分ほどかけ救出したが、下敷きになっていた足からは血が流れており、足の方向が違う方を向いている。
これは確実に折れているだろう。
折れているだけならいいが、骨が粉砕していたら厄介だ。
手術が必要となるからである。
そうなるとここには、相当な期間留まらなければならなくなる。
手術をして、ハイさようなら、とはいかないからだ。
とりあえず足の様子を診るために、和也がその少年ヨンギルの元に近付く。
「医者だ。足を見せてみろ」
「ありがてぇ・・・でも私どもはお医者様に払う様なお金は持ってねぇです」
「お前達から金を取ろうとは思わんから安心しろ」
そう言うと安心したかのように、和也に協力をして来た。
傷口を消毒し、患部を見ると、やはり骨の一部が粉砕しているようだ。
すぐさま応急処置をし、ヨンギルを適当な大きさの板の上に乗せ、車両まで運ぶ。
協力をしてくれた男性とヨンギルの母親が、一緒に車両に乗り込もうとしたが、それは拒否された。
この車両の内部を見せるわけにはいかないと言う事と、雑菌を持ち込まないためだ。
鈴が付いて来た人達に、「これから治療をしますので、2時間ほどお待ちください」と言った。
奇妙な鉄の箱の中に入れられ、2時間も待たされる事になった代替え人たちは、車両の周りに座り込み、ただ時間が過ぎるのを待っていた。
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