ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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◆ 新しい命 ◆
悪路を進む事4時間。
大きな町に入った。
そこは人々の湯治場として利用されている所だ。
幾つもの温泉と宿屋があり、繁華街もかなり賑やかなものだった。
道幅の広い所を選んで、車両ごと町に入っていくと、見慣れない奇妙な動く箱に人々の視線が釘付けとなる。
馬の様に箱の上に人が乗るわけでもなく、籠の様に人が中に乗っている。
しかし、籠を持つ人がいないのに、その箱は勝手に動いているのだ。
ゆっくりゆっくりと、街中を通るその車の後には、好奇心旺盛な大人や子供が数人、後を付いて歩いて来ている。
周りに居る人に接触しないように、細心の注意を払いながら、鈴達の乗った医療車は、車が止められるような広い場所を見つけて、そこで止まった。
そこは、町の中心部分から少し東に離れた場所ではあったが、中心部までは歩いて30分ほどの所である。
そこに丁度、車両が止まれるほどのスペースを見つけ、今日はこの町に1泊する事にしたのだ。
3人が車から降りてくると、集まっていた人達が少し後ずさりをし、ジロジロと観察をしてくる。
男も女も、医者の様な白い着物を着てはいるが、男は短髪で女の方は長い髪を後ろで1本に結んでおり、3人共ここらの住人達とは少し違う、綺麗な顔立ちをしている。
興味は惹かれるが、なかなか声を掛けれるような雰囲気ではなかったのだ。
「こんにちは」
住人の不安を取ろうと、鈴の方から声を掛けた。
人々は顔を見合わせながら何やら言っているようだ。
その声はガヤガヤとした騒音に打ち消され、よく聞き取れはしなかったが、所々聞こえてくる言葉からは
「何者だ?」
「変わった着物着てるねぇ・・」
「ありゃあ、医者じゃないのか?」
「あの箱は何だ?」
「不思議な箱だな・・・」
などなど。
それらの人々を背にし、3人は町に向かって歩き出す。
どこかで晩御飯でも食べようと言うのだった。
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