ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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次の日、約束通り貴族の屋敷に、処方された薬を持ちやって来た。
「こちらが目に使う点眼薬で、こちらの方が目眩を抑える薬となっております」
点眼薬は鈴が使い方を見せてから渡した。
「この薬は14日間、朝昼晩と食事をした後に必ず飲んでください。
こちらの目薬は、目が霞むと思ったらいつでも1滴たらしてくれて結構です」
「で、いくらになるんだ?」
「30銀になります」
「本当に治るんだろうな」
貴族の男性は不審そうに尋ねた。
そこで鈴は、母親の方に尋ねてみた。
「奥様、昨日お渡ししたお薬はお飲みになられましたか?」
「ええ、貴方に言われた通りに食事の後に飲みましたよ」
「あれから目眩は起こりましたか?」
「そう言えば起きてないわね・・・・」
鈴はニヤリと笑い
「どうですか?効果は表れていると思いますが、まだ疑いますか?」
「・・・・・ふむ」
「奥様、目の霞み具合はいかがでしょう」
「あら?いつもより良く見えてるわね・・・」
「いかがですか旦那様。この様に効き目は直ぐに表れますが・・・
買うのは辞めときますか?」
「いったいどんな魔術を使ったんだ」
「魔術などではありませんよ。これが遥か彼方、西の最新医療と薬です」
そして間髪入れずに再度心をくすぐる様な言葉を言う。
「この様な高価な薬を使える方などは、貴方様か王様くらいしか
存在しないのではないでしょうか・・・」
金持ちの、金持ちたる自尊心をくすぐる様な言葉を言ってみると、その予感は見事に当たり、男性は即金で買い取ってくれた。
そして屋敷からの帰り道、和也にまた言われてしまった。
「お前・・・・・詐欺師が天職じゃね?」
「ありがと♪褒め言葉に受取っておくね♪」
笑ながら答えた。
それを見ながら和也は少し笑ってしまうのだった。
「なに笑ってるのよ」
「いや?別に?
お前ってさ、たくましいよな・・・頼りにもなるし」
和也の口から初めて聞いた褒め言葉であった。
たぶん和也も、口には出さなかったが不安だったのであろう。
訳も分からず千年前に飛ばされ、何処に行けばいいのか、どうすればいいのか、全く見当もつかず、いま車両に積み込んである、備蓄分の食料が尽きた時の事を考えると、かなり不安になるのは分かる。
その打開策があったとしても、今の自分が行動に移せるかどうかと言うと、あまり自信が無かったと言う事。
それを鈴は躊躇も無しにやってのけ、当面の生活費をたった1日で稼ぎ出してしまったのだった。
それも巧みな話術と駆け引きで・・・・。
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