ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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貴族の家に着くと、母親の部屋に通されたが、母親は若い医者をあまり信用していないようだ。
「そのような者に分かるのですか?」
「奥様、とりあえず見せて貰えますか?」
鈴が母親の目に光を当て、瞳孔を確認する。
貴族の男性は、鈴が持っている不思議な光の出る物体に興味を持ち、それが何なのかを聞いてくる。
「これは懐中電灯と言う物で、光が当たらない暗い場所や、今みたいに場所を特定して
見たい所に光を当てる物です」
「ほぅ~、それは売り物ではないのか?」
「これは私の商売道具なので売り物ではございません」
「それは残念だな」
鈴が目だけを見ると、白内障の症状が出ていた。
しかし幸いにもそれは、薬を点眼すれば治るものであった。
目が霞む原因は分かった。
しかし目眩の方の原因はなんなのか、診ただけでは分かりづらい。
目を見た時に、貧血の症状が出てはいたが、はたして貧血だけが原因だろうか。
聴診器を当て、内診をしてみるが、それらしい症状は出ていない。
「奥様。血液検査をしますので、血を少々頂ますね」
そう言いながら、医療バッグの中から採血用の注射器と採決容器を取り出し、母親の腕を捲ってもらい、適当な高さの台の上に腕を置いて貰うと、腕にゴム管を巻き付けた。
「それは何をする物なんだ?」
母親を心配そうに見る貴族が尋ねる。
「これは腕の血を一時的にこのゴムで止めてるんです。
この方が血が取りやすいんですよ。すぐ済みますからね」
鈴が手早く2本分の採血をし、それをカバンに入れ、車両に持ち帰ってから遠心分離機を使い検査をしようとしていたのだ。
「そんなに血を取って大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。ご心配ならこの薬を差し上げますが・・・」
そう言ってカバンからビタミン剤と鉄剤を取り出し、貴族の男性に見せる。
「これは?」
「これは、血を作るのに必要な栄養分を凝縮した薬です。
でもこれ・・・少し値が張るんですよね・・・珍しい物なので・・」
「いくらだ?」
「5銀です」
「5銀か。貰おう」
「賢明なご判断でございます」
お前は大黒屋か!と言いたくなるほどの商売上手だ。
今日1日で55銀(55万)の儲けである。
鈴はまた明日、検査結果が出てから来ると言い残し、屋敷を後にした。
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