ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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路地の一角に、キャンプ用の折り畳み式テーブルを置き、その上に実物の見本を並べて売ってみる事にした。
テーブルの、路地に面した淵に【 折り紙5銀 綴り紙5銀 色棒50銀 】と書いた紙と、
【 病気の方 診察いたします お気軽に声を掛けてください 】と書いた紙も貼り付け、
客を待っていた。
しかし、あまりにも高値の為に、一般庶民には手が出せないで、ただ眺めているだけでしかなかった。
ただ置いてあるだけでは、これが何なのか、何に使うのか分からない。
そこで鈴がクレヨンを使って落書き帳に絵を描きだす。
鈴が持っている色付きの棒から、その棒と同じ色が真っ白な紙に綺麗に塗られていく。
鈴が座っている場所から見える位置にある、団子・お菓子・店に飾られている着物・着物に付ける小物、それらが紙の中一杯に描き込まれていった。
「ほぅ~、上手いもんだな」
「本物みたい・・・旨そうだな・・・」
大人はただ感心し、子供はその絵を見ながら、今にもよだれをたらしそうな勢いで言う。
その人だかりに興味をひかれた貴族らしき人物が、人山をかき分けて前の方にやって来た。
「それは何だ?」
鈴は描いてた手を止め、その声の人物に視線をやる。
「これはクレヨンと言う物で、遥か西の方から持ってきた珍しい道具です。主に絵を描く
時に使う物です」
「色彩粉を使わずに絵が描けると言うのか」
「はい。使ってみますか?どうぞ」
そう言って鈴はクレヨンをその貴族に手渡した。
「この紙にご自由にお書きください」
今書いたページを切り離し、用紙を貴族の方に向けて近づけた。
貴族は、12色すべての色を手に取り、用紙に殴り書きをし、その手触りと色具合を確認する。
「これは素晴らしい。いくらするんだ?」
「50銀です」
「50銀とは高くないか?」
「この様に珍しい道具ですからね。その値段でも安い方だとは思いますよ?」
そう言われればそうかと、貴族も納得をし、50銀でクレヨンが売れたのであった。
商売上手の鈴は、おまけだと言い落書き帳も一緒に渡したのだった。
世にも珍しい物がいっぺんに二つも手に入った貴族は、とても喜んで得をした気分になり、品物の御品書きの隣に書いてある張り紙に目をやり、鈴に尋ねた。
「お前たちは医者なのか?」
「はい。旅の途中ですが、医者です」
「医者か・・・丁度良かった。うちに来て診て貰いたい者が居るんだが」
「分かりました、お供させて頂きます」
鈴達はテーブルを片付けると、そのまま貴族の屋敷に向かった。
屋敷に行く道のりで、診て貰いたい患者は母親だと言う。
最近、目が霞み目眩がすると頻繁に言うらしいが、医者に見せても原因がわからないらしい。
そこで、西から来た医者ならば、何か原因が分かるかもしれないと声を掛けたのだった。
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