ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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幸いな事に鈴達は医者であり、薬剤も豊富に積み込まれている車両が手元にある。
だがそれにも限りがある為、あらかじめ稼いだお金で、この時代で売っている薬草などを買い、それを調合して稼ごうと言う事になった。
そして、今一番重要な情報は、この時代がいつの時代なのかを確かめる事である。
鈴は、食堂の経営者でもありそうな1人の女性に声を掛けた。
「こんにちは。私たちは西の方から来た旅の医者なんですが、この国の王様は
今は誰がなっているんですか?」
無難な聞き方である。
さり気なく旅人を装い、王様の名前を聞けば、その時代がいつの時代なのが解るからだ。
「あんたたち、相当な田舎から来たんだねぇ。
王様の名前も知らないなんてさ・・・王様の名前はね、「莉 眸頴(り しゅんえい)」
様だよ」
「有難うございます」
莉 眸頴・・・・確か千年近く前の、鮮朝国の王様の名前だ。
「・・・・おぃ。莉 眸頴って言えば、鮮朝国の創立者じゃなかったか?」
「記憶が正しければ、私もそう思う」
「あっ・・・僕、1つ思い出したことがあるんだけど、その人、医術に凄い関心が
あったみたいで、若い頃に医術を華国で学んだって話だよ」
「私、なんだかその人に会ってみたくなっちゃった」
クスクスと笑いながら、冗談なのか本気なのか、鈴の目は爛々と輝いていたのだった。
そうは言っても、王様になどそう簡単に会えるものではない。
だが、会える方法は1つだけある。
鈴達がこの国で医者として働き、その名を王宮まで届かせればいいのだ。
しかし、そこには問題もあった。
本来なら寿命で死ぬはずの人間が、未来の医療で命を延ばすと言う事は、未来の歴史をも変えてしまうかもしれないと言う事だ。
例え病人や怪我人が居たとしても、未来から来た人物がその命を救ってはいけない。
ただ見ているだけしか出来ないと言う事になる。
たとえ自分たちに、その者の命を救う技術があったとしてもだ。
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