ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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王都に戻る道のりで、1ヵ所だけ宿屋に泊らない場所がある。
そこではテントを張り野営をするのだ。
その時に1人で行動をする和也を狙うと言う作戦だった。
「今日はここで野営にする。準備しろ」
武官たちが慌ただしくテントの準備を始める。
最後尾から付いて来た鈴達の車も、テントの近くに止め、鈴と和也は手分けをして、具合の悪そうな武官たちの診療に走り回っていた。
和也が鈴から離れた所を確認した数人の武官が、和也に近付き言う。
「あっちのテントに具合が悪そうなやつがいるんだが、見て貰えないか?」と。
武官に連れられてテントに行ってみると、中に数人の人がおり、テントの中で囲まれる状態になった。
「なんだ?いきなり」
「すまん。これは命令なんだ。悪く思ないでくれよ」
そう言いながら刀を抜き、切り掛かって来た。
この時代に来てから、幾度となく同じような事があった和也は、とっさに身をひるがえし、武官たちを指輪に仕込まれているスタンガンモードで気絶させ、その場から逃げて車の中に入る。
慌てて走って行く和也の後姿を見た鈴は、何事が起ったのかと後を追う。
和也の背後から、スタンガンから逃れた武官が、剣を振りかざして追っているのが分かる。
それを見た鈴は、レーザーモードでその一人を気絶させ、和也の後から車に乗り込んだ。
「いったい何があったの!?」
「わからん。命令がどうのとか言ってたな」
―― 命令
その言葉で何かを思い出したのか、鈴はすぐさま車を出すと言った。
「何か知ってるのか?」
「これは推測だけど、たぶん・・・ソウレンね・・。」
「ソウレンが何で?」
「和也さえいなければ、私がソウレンの愛人にでもなると思ったんじゃないかな」
少し考えた和也は、『そう言う事か』と納得をした。
「で、どうするんだ?」
「もう、この国には居られないわね。
ソウレンの事だもの、何処に行ったって追って来るわ。
隠れて暮らすなんてまっぴらごめんよ!
このまま1度診療所に戻って、この国で稼いだお金を全部置いて、後は診療所の
みんなに任せて、私たちはこの国を出ましょう」
「それで何処に行くつもりなんだ?」
「決まってるじゃない!日本よ!」
鈴はにっこりと笑い決断をする。
和也は、いつも鈴は突拍子もない事を言い、それを実行する鈴には慣れていた。
そして、その突拍子もない事が、ほとんどの場合良い方向に向かっていくのも知っている。
「お前がそう決めたなら、俺は何処までも付いて行くさ」
口角を少し上げながら、クールに笑う和也だった。
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