ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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事態もひと段落し、この地域は、後は食料の配給だけとなった。
「ソウレン、配給の手配は進んでいるんでしょうね」
「手配?」
「まだしてないの!?いったいここに何しに来たのよ!!」
また怒られる。
良い雰囲気になど一向になれる気配がしない。
「ここにいつまでも突っ立ってないで、屋敷に戻ってとっとと準備しなさい!」
鈴に怒られたソウレンは、従者を連れて屋敷に戻り、ありったけの食料を持って来た。
「・・・・ソウレン・・・。」
「なんだ? 礼ならいいぞ」
沢山の食料を持って来たソウレンは、満足げな顔をして言った。
しかし鈴の口から出た言葉は、
「いったい何考えてるの!?
食料に困ってる人はここだけじゃないのよ!?
全部持って来てどうするの!
他の地域の人は死んでもいいって言うの!?
あなたのその頭は飾りなの!?
・・・・まったく・・信じられない・・・。」
鈴はプルプルと体を震わせながら言った。
「おぃ、この食料、分散して車に積んで俺が運ぶわ。
その方が確実そうだし」
「ありがとう、和也。
そうしてもらえる?」
ソウレンのやることなす事が、すべて裏目に出るのだった。
しかしここの領主、どれだけ年貢を霞め取っていたのだろうか。
不作の割には、かなりの量の食料が倉庫に眠っていたようだ。
地域の調査と食料の手配。
全てが終わるのに一週間がかかった。
ようやく落ち着いた頃、とうとう鈴と二人だけの時間が出来たソウレンは、鈴の労をねぎらい、少し散歩をしようと言う。
鈴にしてみれば、散歩をするよりベッドで横になりたかったのだが、ソウレンに子犬のような目をしてお願いされては、むげに断るのもはばかれた。
近くの川辺を散歩しながら、ソウレンは鈴に問う。
「私では、そなたの伴侶には不足か?」
「・・・そうね、私とは価値観が違うと思うから、不足と言うより相性自体が会わないかも」
「そんな事はない。私は鈴が好きだ。他に何がいる」
「ごめんね。私はあなたの事を弟以上に見た事が無いわ」
「今はそうでも、そのうち一人の男として見て貰えるように努力する」
「・・・ごめん。私、好きな人がいるのよ」
「それは・・和也の事か?」
「ええ。」
鈴の答えを聞き、ソウレンは愕然とした。
今まで自分が望めば何でも手に入った。
逆に言えば、手に入らない物など無かったのだ。
それを何度求愛をしても断り、好きな人がいるから無理だと言われた。
頭が真っ白になる様な虚無感がソウレンを襲う。
そして一つの感情が生まれた。
―― 和也さえいなければ・・・と。
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