ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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大名行列の如く、大勢の従者を引き連れ、ソウレン一行は出発をした。
その一番後ろから、鈴と和也が乗り込んだ医療車両が後を付いて来る。
何とも奇妙な光景だ。
歩いて移動をする事一週間。
やっと北の領地に辿り着いた。
話しに聞いていた通り、田畑は荒れ果て、人々は死人の様な生気のない顔をしている。
その人々の中を通り抜け、その領地で一番大きな屋敷を持っている、貴族の屋敷に滞在する事になった。
とは言っても、屋敷に滞在できるのは、皇子と貴族の重臣だけである。
他の者は外でテントを張り、その中で寝るのである。
皇子様たちが泊まる屋敷では、何処から持って来たのか、ご馳走が山の様に並べられていた。
それらの前で、重臣や皇子は何の疑問も抱かず食べようとしていた。
その時、鈴の姿が見えない事に気がつき、家臣に鈴を連れてくるように命じる。
しかし、何処を探しても見つからない。
見つからないどころか、2人の乗って来た車も無くなっている。
その事をソウレンに伝えると、ソウレンは慌てて歓迎会を切り上げ、鈴が向かうであろうと思う場所にやって来た。
ソウレンが思った通り、鈴達は倒れている人々の診療をしていた。
診療だけではない。
大きな鍋におかゆを炊き、それをみんなに配っていたのだ。
「そんな所で何をしている」
ソウレンが鈴に声を掛けた。
「見ればわかるでしょ?
私たちはもてなしを受けに来たわけじゃないの。
命を救いに来たのよ」
そう言われ、何も言えなくなるソウレンだった。
「・・・・あいつは・・和也はどうした」
「和也なら車で巡回して患者を運んで来るわよ」
2人はきっちりと、自分に与えられている使命を全うしようとしている。
それに比べ自分はどうだ。
目先の甘い言葉に釣られ、ここに来た目的を忘れていた。
ここに来た目的は・・・『鈴と二人きりになり、良い仲になる事』だ!
(おぃ!そこは違うだろ!!)と、突っ込みを入れたいところだが、所詮ソウレンの頭の中は、領民より自分の事の方が大事らしい。
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