ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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「本当に頂くわけにはいかないので持って帰って下さい」
「受け取って貰わなければ私の首が胴から離れてしまいます。受け取って下さい」
こんなやり取りをしているのは、鈴とソウレンの使いの者だった。
ソウレンは、義弟コウレンのアドバイス通り、鈴に真珠で作られた髪飾りの、貢物を送ったのだ。
しかし鈴は、貰う謂(いわ)れの無い物を頂くわけにもいかないと断っていた。
日本のことわざに、「只より高い物は無い」と言うことわざがある。
只で何かを貰うと、代わりに物事を頼まれたり、お礼に費用がかかってしまい、後でとんでもない目に合う。と言う意味だ。
(余談だが、この「只」という漢字を上と下ばらすと、「ロハ」となり、この字の語源はここから来たらしい。)
鈴は、使いの者の首が飛ぶと聞き、仕方なく受け取ったが、それが運のつきで、その日から毎日ソウレンから何かしら送られてくるようになったのだ。
ある時は高価な飾り物。
またある時は、綺麗な花が咲いた鉢植え。
そしてある時は、珍しい食べ物が送られて来た。
それらの物を仕方なく貰う鈴だったが、貰った物のうち、換金出来る物は換金をし、医療費に充てたり、食べ物は貧しい人に分け与えていた。
「またソウレンからか?」
往診から帰って来た和也が聞いてきた。
「うん。こんなに無駄遣いするくらいお金が余ってるんなら、貧しい人に何かしてあげればいいのにね・・・」
鈴は呆れたように言う。
その様子を見た和也は、「いつの時代でも、お偉いさんは何にも分かってないよな」そう、ポツリと呟くのだった。
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