ハナミズキ 2014-10-10 16:57:40 |
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一方、そんな事など知らない診療所では、とうとう鈴が暑さのためにダウンをしてしまう。
鈴の体を心配した和也は、しばらく車の中で休んでいろと言い、午後の診療を休診する事にした。
夏と言う事もあり、薬を買いに来る患者以外はほとんど来ない。
来ないのなら思い切って休むこともたまには良いだろうと、使用人たちにも休暇を与える。
診療所の留守番は、診療所内に住んでいる人たちに任せ、鈴と和也は車の中に戻ったのである。
車の中は、精密機器類が沢山あるので、常に一定温度で車内が保たれている。
それに、車の中なら現代の洋服を着ても、誰も文句を言わない。
鈴はシャワーを浴び、先ほど着ていたキャミと短パンに着替えると、やっと一息つけたかのように、手足を投げ出しソファーに腰かけた。
「生き返るぅ~♪」
「ババくせぇな」
悪態を付いてはいるが、その言葉とは裏腹に、和也の顔が少しほころんでいた。
「おぃ」
「ん?」
「腕出せ」
「えっ?」
見ると和也の手には点滴が持たれていた。
「おまえ脱水症状が出てるぞ」
「気が付かなかったわ・・・」
「おまえって、ほんと自分の事には鈍いよな」
そう言いながら鈴に点滴を施した。
「点滴なんて何年振りかしら」
そう言いながらケラケラと笑うのだった。
「おまえなぁ・・・自分の体の管理はちゃんとしてくれよ。
俺が心配しないとでも思ってるのか?」
そう言いながら鈴の事を抱きしめた。
「おまえにもしもの事があったら俺は・・・
だから、自分をもっと大事にしてくれ・・・」
和也に抱きしめられた鈴は、ふと、あの秘境での出来事を思い出す。
和也の広い胸に抱かれていると、とても安心する。
1人じゃないんだと思わせてくれる。
そして、温かく適度に筋肉の付いた体が心地いい。
ずっとこうしていたいとさえ思うのだった。
「ごめん・・和也・・。
これからは気を付けるね」
鈴がそう言うと、和也はそっと体を離し、鈴の頭を『ポン』と1つ叩くと道具を置きに別室に行った。
鈴は、車内の心地よい空気と温度に身を任せ、そのままソファーで寝てしまうのだった。
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