ハナミズキ 2014-10-01 16:30:45 |
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鈴木さんは、午前中に内科から回されてきた、あの盲腸の患者だ。
佐々木先生の検査では、カタル性虫垂炎だと診断されたようだが、鈴がお腹を触り、診断をしてみると、どうやら蜂窩織炎性(ほうかしきえんせい)のようだった。
「これは・・・直ぐにオペの準備をお願いします」
「でも、佐々木先生に診て貰わないで勝手な事は出来ませんよ」
看護師は、学生のくせに何を分かった風に言ってるんだと、バカにしたような目で見ていた。
これがもし、和也が言ったとしたなら、そんな目では見なかっただろう。
それから少しして、急ぐ風でもなく、佐々木先生がやって来た。
患者の容態を見た佐々木先生は、やはり直ぐにオペの準備をするように、看護師に言う。
そして、緊急オペが始まったのだった。
鈴達4人も、見学の為オペ室に入る。
手術の邪魔にならないように、先生方の後ろで、少し距離を取って見ている状態だ。
鈴以外の3人は、真剣にその手さばきを見ていたが、鈴だけはこんな事を思っていた。
『あぁあ、そんなに大きく切らなくても、アッペ(盲腸)なら出来るでしょう・・・』
『なんでそんなに時間がかかるのかしら・・・』
『えっ?!それって、破裂しかかってるじゃない!一番ヤバイ症状でしょ!』
などと、口には出さなかったが、本気で焦っている様子の鈴だった。
担当医の佐々木も、さすがにヤバイと思ったのか、かなり焦っている。
普通の虫垂炎だと思っていたら、今にも破裂しそうな状態になっており、この様な状態の虫垂炎は手にかけた事が無かったからだ。
助手をしていた研修医も、他の先生を呼びに行くかどうかを訪ねていた。
「先生、どうしますか?八代先生ならまだ医局に居ると思います。
呼んで来ましょうか?」
「・・・頼む」
どうやら佐々木先生は、年の割にはまだ経験が浅いようで、簡単な手術しかやった事が無いようだった。
普通の虫垂炎なら、研修医でも出来るような簡単な手術だが、壊疽性虫垂炎ともなるとそうはいかない。
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