胡蝶 2014-09-12 22:42:07 |
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三日月の綺麗な夜だった。あたしはベッドの中で、宇田の話が途中だったのかもしれないことに気付き、ぼんやりとそのことを考えていた。
「…何だったんだろう、あの話」
もし、更に続きがあったのだとすれば、そこで宇田があのような不吉な話をあたしに伝えた理由が明かされていたのかもしれない。しかし、もう過ぎたことで、あたしが取り乱すことがなかったとしても、あそこで話が終わっていた可能性もなきしもあらずだ。考えることが億劫になり、あたしは毛布に顔を埋めた。病室の窓からは月の光が射している。
何度も経験した、眠り難い夜がやってくる。あたしは姿勢も変えずに、入眠するまでの時間をじっと耐える。
「続きはあったよ」
誰かが言った。月明かりに影を落とし、窓際に佇む気配を感じて、あたしは顔をあげた。
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