胡蝶 2014-09-12 22:42:07 |
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「…夢?」「そう、夢。--…」宇田の言葉を反芻するように呟く栞。言いにくい内容なのか、視線を泳がせてから宇田は切り出した。「--コイツ…片瀬がさ、笑ってんだよ。」どこか眠り姫を連想させるイツキを見据えながら宇田が言えば、静かな病室にその声が響いた。「え…いっちゃんが?」この美しい幼馴染みの笑顔を、もう何年見ていないことになるのだろう。例え彼の夢の中だろうと、笑っているイツキが存在することに嬉しさを感じた。「…そっ、か。うん、よかった。」涙を堪えて微笑みかければ、気まずそうに視線を逸らす宇田。「…いや、笑ってるっていっても、普通の笑い方じゃねぇんだよ。狂ったように…ずっと笑い続けてて--でも、自分でも止められないのか、泣きながら笑ってて。」その光景を想像して、栞は目を見開いた。
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