胡蝶 2014-09-12 22:42:07 |
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怪物が消えたあとも栞はイツキに腕を掴まれたまま尚も硬直していた。足は震えがくがくしており、イツキに手を離されたらへたりこんでしまいそうであった。
(何だったんだ今のは…)混乱する頭でそう思ったとき、廊下から物音が聞こえた。続いて怪物の声と思わしき絶叫。
それに驚いて、騒然としていた教室が静まり返った。何人かの女子のすすり泣く声だけが聞こえる。
イツキは冷静な眼差しであたりを伺っているようだった。
廊下から強い風が吹き抜けるような音がし、真っ黒な霧が大量に教室に吹き込んできた。栞は思わず目を閉じて悲鳴をあげた。他の生徒の声と混じり、耳が痛くなる。
「やれやれ、この程度の魔物相手に馬鹿馬鹿しい」
目をあけると教室の入口あたりに1人の男子…宇田 亮一が立っており、教室内には影が戻っていた。どうやら、さっきの怪物は宇田が退治してくれたようだった。
窓の外では、1人の少年がその様子を見て、つまらそうな顔をし、何か一言呟いたあと(多分、何だつまらないとかそんな台詞)何処かへと飛び去っていった。しかし、それはこの時点では誰も知らないことだった。
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