雲 2014-08-18 15:57:06 |
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ようやく斜面を登りきると、そこには生徒から連絡を受けた先生と保険医の先生が、どうやってこの斜面を下りて助けに行こうかと相談をしているところだった。
優樹菜を背負い急斜面を登ってくる海藤 新に気が付いた先生は、手を伸ばし二人を引き上げた。
「怪我はないのか?」
「はい。僕は何ともありません。
でも、相模さんが足を痛めたようなので診てもらえますか?」
息を切らしながらそういうと、背負っていた優樹菜をそっと地面におろし、手当てを受けさせる。
幸い軽い捻挫と打撲の様なものだけで、他に怪我は見当たらないようだ。
宿泊施設まで先生が優樹菜を背負って下りると言ったが、優樹菜はこれをかたくなに拒否した。
「先生、僕がおぶっていきます」
「いや、でもな・・」
「僕なら平気ですよ。相模さん軽いから」
「それじゃ海藤に頼むか・・・」
再び新の背におぶわれる優樹菜だった。
「相模さん・・・顔を見られたくないんでしょ?
だったら僕の背中に伏せてるといいよ。
そうしたら誰にも顔は見られないから」
優樹菜にだけ聞こえるような小さな声でささやいた。
優樹菜は新たに言われたとおりに、新の背中に顔を伏せ、少し震えてはいたものの、恐怖心は全くなかった。
宿舎に帰ると数人の女子達が二人の帰りを待っていた。
二人の帰りというか、厳密には海藤 新の帰りを待っていたという方が正しいだろう。
「海藤君、大丈夫なの?怪我とかしてない?」
「僕は大丈夫だよ。でも相模さんが怪我してるから、そこ通してくれるかな?」
女子達の間を通り抜け、優樹菜を部屋まで送って行く時に
「ちょっと、なんで相模さんなのよ」
「あ~ぁ・・・私が怪我をすればよかった・・・
そうすれば今ごろ海藤君に背負われてるの私だったはずなのに・・・悔しい~」
「ちょっ!見てよあれ!背中にしがみ付いてるわよ!?」
「相模のくせに生意気よね・・・!」
いらぬ所でいらぬ嫉妬心を買ってしまった。
その日から優樹菜には、女子達の陰湿ないじめが始まったのだ。
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