雲 2014-08-18 15:57:06 |
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浮かんでは消え、消えてはまた浮かぶ。
風に乗り、ふわふわと空を漂う雲。
人は私の事を『くも』と呼びます。
そんな私が見た、ある一人の女の子の話をいたしましょう。
その女の子は、栗色の髪にゆるいウエーブがかかっており、瞳はくりくりと大きく、とても可愛い女の子でした。
あまりにも可愛い子だったので、少し変な趣味の入ったお兄さん方が、その少女と仲良くなりたがり、お菓子やおもちゃで釣ってお家にお持ち帰りしようとしている人もいました。
その度に少女の3人のお兄さん達が、少女の危機を救い、連れて逃げるという日々が繰り返されていたのです。
少女が成長するにしたがって、変な趣味のお兄さん達の数も増え、両親とお兄さん達はとても心配をしました。
そして、お兄さん達が出した結論は、【 少女変身プロジェクト 】という、美少女から影の薄い根暗な女の子に大変身をさせました。
栗色でふわふわの髪は、固く三つ編みにしおさげに。
可愛らしい口元は、出っ歯の偽歯をはめ込む。
くりくりとした大きな瞳には、メガネと目が隠れるほどの長さの前髪で覆い、頬にはそばかすを沢山書き込みました。
もう誰も以前の可愛らしかった少女だとは夢にも思いませんでした。
そして、もしもの時のためにと、護身術として合気道を習わせ、それでも妹の事が心配で心配でたまらないお兄さん達は、学校の送り迎えを交代でやるほど過保護に育てました。
4人目にして初めて出来た女の子でしたので、両親もお兄さん達も、それはそれは可愛がっていました。
そんな愛情いっぱいに包まれ育った少女は、素直で優しい子に育ったのです。
お兄さん達にしてみれば、そんな可愛い妹に、悪い虫がつかないようにとの警戒作だったのかもしれません。
お兄さん達のもくろみは、見事に大当たりで、現在、高校1年生になったいまも、彼氏いない歴が年齢となっていました。
少女は、幼いころに付きまとわれた、少し変な趣味の男の人達のせいで、家族以外の男の人が怖くて仕方がなかったのです。
体に少しでも触れられると、むかしの出来事がフラッシュバックをして、体が硬直して動けなくなってしまいます。
だからなるべく男子のそばには近寄らないように、学校生活を送っていました。
中学の頃は、一つ上のお兄さんがいつも守ってくれていました。
一つ上のお兄さんは双子で、とてもかっこよく、文武両道でした。
一番上のお兄さんも、日本人離れをした端正な顔立ちをしてました。
この兄妹が美男美女の訳は、父親がイギリスとのクウォーターで母親がロシアとのクウォーターだったからです。
特に妹にはロシア系の血が強く流れたのか、両親の良い所をまんべんなく取り込み、それはそれは美少女に育ちました。
ですが、その事を知っている人達は少女の家族しかいません。
あの日からずっと少女は変装をし続け、その素顔を隠していたからです。
高校生になった少女は、一つ上の兄達と同じ学校に通う事になりました。
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