雲 2014-08-18 15:57:06 |
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◆ 若いって素晴らしい ◆
鏡に映る自分の顔を見ながら、私は頬をつねってみる。
痛い・・・。
夢じゃない。
本当に若返っているのだ。
夫と娘に昨日の夜の事を話すが、信じてくれない。
しかし、直ぐに信じてもらえるような出来事が起こった。
隣の家に、親戚と思われる人が続々と来はじめたのだ。
程なくして玄関には『喪中』の張り紙が。
そして葬儀屋さんの出入り。
私の話しと符合した。
「ねっ?言った通りでしょ?」
2人は信じられないと言った表情で私を見る。
何が何だか分からないうちに、夫と娘が家を出る時間となり、慌てて出て行ってしまった。
1人になり、食事の後片付けなどをしている時、ふと、姿見に映った自分の姿を見た。
顔は若いのに服装がババ臭い・・・。
まったく似合っていない。
そうだ。せっかくだから、買い物ついでに洋服も買っちゃいましょ。
夫は毎晩のように飲んで歩いてお金を使ってるし、娘だって季節ごとに服を買ってる。
私なんか、この服を何年着てると思ってるのよ。
たまには自分の物を買ったって罰は当たらないわよね。
そう自分に言い聞かせ、今のスタイルに合う洋服を買い込んだ。
買い物をしてる最中にも、数回ナンパをされる。
私もまだまだ捨てたものじゃないと、少し嬉しくなってしまった。
こんなおばさんが着るような服を着てるにもかかわらず、ナンパをされた私は有頂天になり、そのまま美容院に行き、流行の髪型にしてみた。
思いのほか似合っていた事に、自分でもびっくりだ。
家に帰り、夕飯の準備をしていると、二階から息子が下りて来た。
そして、朝の2人同様に固まる。
思わず笑ってしまった。
「あははは。優也もお父さんや梨花と同じ反応するのね。やっぱり親子よねぇ~」
「・・・・で、誰?」
「お母さんよ。でも説明が面倒くさいからパスね」
「母さんがそんなに若いわけないだろ」
昔から頭の固い息子は、自分でもにわかには信じられない様な話を、信じるはずがない。
だから私は、私である確たる証拠を見せつけた。
洋服の前ボタンを外し、胸にある大きく赤い、バラの様な痣を見せた。
「どう?これで信じた?」
普段見慣れてるはずのこの痣を見た息子は、何故か顔を真っ赤にしていた。
いくら母親だと分かってはいても、目の前で下着を見せているのは、自分より若く綺麗な女の子だからだ。
どう接していいのか分からない様だ。
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