パンフレット 2014-05-06 15:22:38 |
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矢谷先生
…壊れることなんてなかった。
(何もなかった表情が少しだけ歪む。瞳にいつもよりたくさん水が張り、キラキラと光っている。瞬きをすれば零れそうな涙がそこにはあったが自分のプライドがあるのか泣くことはしない。相手の無機質な声が何故か心地いい。こんな時、普通の人間なら同情の言葉であったり自分を可哀想だと言ったりするであろう。しかし相手からは何も感じられない。それこそ人間の本性なのではないか、と感じて。自分は自分が言うほど強くないことは紛れもなく自分が知っている。だからこそ、こうして自分と同じ種類の誰かに話を聞いて欲しくなる。「兄さんを壊したのは、オレだ…」と相手に言うのではなく自分にも言い聞かせるように述べるとまた意味もなく笑い。無感情に伝えられたその優しい言葉に溺れそうになる。本当に自分はいつまで経っても弱い。過去にすがりつりてる。そんなの自分らしくないがまだこの過去を切り離してこの痛みを切り離したくない。相手の手を握りながら床に座り込んでしまう。まるで幼い子供のように、自分の冷たい手がだんだん相手の体温になって暖かくなる感覚がどうしようもなくもどかしく感じて
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