豆 2014-01-06 15:13:58 |
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"独白"
俺がそいつを拾ったのは一週間前の事だった。
久し振りに残業する程急ぐ仕事も無く、定時あがりだった筈だ。
何せ見ず知らずの野郎を拾ってやる程機嫌が良かったんだから。
…話を戻すが、雨の日の夕方だった。冬っつう季節柄、辺りは真っ暗だったな。
都内って言っても端の方だからぽつぽつ電灯があるくらいの、そんな帰り道。
毎日通ってる同じ道なのに、その日だけは違ってた。
道の端にある透明のビニールを被った"モノ"。最初はゴミだろうと思ったし
丁度電灯が近くにない所だったから普通に通り過ぎる所だった。
けど視界の端でそれは動いた。もぞっとな。此処だけの話だが…びびった。
死体が動くだの幽霊が出ただのそういう話は一切信じてねえけど。
ま、それでちょっと近付いてみたんだよ。ンで、軽く足で突っついてみた。
そしたらそれが呻いたんだよ。そこで初めてそれが人間の男だってわかった。
ビニールみたいなのは雨合羽で、此処でボロ雑巾みたく捨てられてんだなと。
赤の他人って言っても周囲に俺以外居ねえし、人通りも少ない手前、
放っておくってのは良心が痛んだ訳。…あ?良心くらいあるっつのクソが。
何時から居たか知らねえけど、雨に打たれて死ぬんじゃねえかってな。
けど見るからに俺よりでかいし雨降ってて手ェ塞がってるしで怠さはピーク。
そっからうちが近くて本当に良かったと思う。説明すると面倒臭えから
省くけど、そりゃあ苦労して連れて帰った。冷てえし水含んで重いし野郎だし最悪。
うちに帰ってからもまァ、濡れた身体拭いて暖かい部屋に入れて毛布巻き付けて、とか
色々あった。正直、犬猫拾う感じの軽いノリで拾った訳。普段なら考えらんねえけど。
――…そこから、今までと違う生活が始まった。
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