Rhythm&Drums

1996年

NASA のスペースシャトル「エンデバー」に若田光一 宇宙飛行士が乗船した年。
親父が望んでいた第一子、盛大に泣き声を上げて、俺男子として誕生。

2001年

アメリカでジョージ･ブッシュ大統領が就任する中、
母親が離婚してから、悩んで僅か数ヶ月妹『みう』同じく大きな鳴き声とともに誕生。

私たちの兄妹は仲が悪く、いつも喧嘩ばかりしていた。
しかし、兄として負けるわけには行かず、暴力に訴えると当然の様に母に叱られた。
私は元々運動が苦手で、友達と関わるのも苦手だった。
小学3年生中盤、私は引きこもってしまった。元々、サボりがちではあったのだが、
音楽の新任女教師、『高橋』に呆れてしまったのだ･･･。

筋が通ってない、子供だから解らない。そう思う人もいるだろう。
しかし、生まれて9年ずっと泣き虫だった私には彼女の言葉が重く感じたのだ。

｢泣いている奴は、放っておきなさい｣

その時、彼女がどんな顔をしてるかは存じかねるが、
恐らく当時の私にはどんな表情も冷徹に見えただろう。
私は、涙ぐんだ後全力でその場を去った。そして、トイレの個室に逃げ込んだのだ。
当時の私は、一人になれる場所が安心だった。

家に帰れば即ゲーム、私はその時ゲーム以外の能力は何もなく、
将来ダメ人間としてとても有望だっただろう。

体力もなく、コミュニケーション力もない･･･。
母もどれ程心配をしたのか、見当もつかない。

時は変わって、私が落ち着きを取り戻した小学4年生後半。
丁度『高橋』がいなくなり『森先生』が来た頃だった･･･。

私は相変わらず、授業のサボり癖が抜けず、通級等に通いながら小学校に通っていた。
体育の時間、誰もいなくなった教室を独りで眺めることが多くなった。
友達などいない。ただ、寂しかった訳ではない。もう、面倒だったのだ。
何もかも投げ出して、生きていけたらと考えてしまった。

私は楽しいことをしようと考えた。
だから、つまらない授業には出ず、図工や音楽にしか参加しなかった。
そんな中、とある日うちの学校が一台のドラムセットを購入した。
皆は物珍しさに触ってみたりしたが、私は前にどこかで見たことがあるような、
それでいて心の奥底を惹かれるような、そんな錯覚に陥ったのだ。

当然学校の備品だ、決して高価なものではない。
しかし、私は何か、心の奥で何かが吹っ切れた気がした。
それとともに、途轍もなく大きな感情に胸が膨らんだのだ。
そう。探し物が見つかったような、大きな喜びに――――――――。