ムツキ 2012-08-23 13:09:41 |
通報 |
真っ白いリノリウムで塗られた廊下を進む───
床と同様、壁まで白い───
申し訳程度にある小さな窓には、鉄格子が填められ、其処から覗く三日月がなんともシュールである。
歩いているのは、男が三人───
中央を歩くはオレンジ色の囚人服。
その両脇を、看守と思われる二人が固める。
二人共、銃床を切り詰めた様な接近戦用の小銃で武装している。
その少々物騒な状況にも拘らず、囚人は呑気に鼻唄を唄い───
看守の一人が止めさせようと銃で小突こうとするが、透かさずもう一人が目で制す───
───好きにさせておけ───
アイコンタクトでそう受け取り渋々ながら、銃を下ろし小さく悪態をついた。
長い廊下を進むと、殆ど壁に同化した様な真っ白いドア───
そ
その横には指紋・角膜・声紋認証付きの電子ロック───
看守が慣れた様子で次々と外していくと、素っ気の無い電子音と乾いた解錠音が静かな廊下に響いた。
もう一人がドアを開け、顎でしゃくるように囚人に入室を促す───
部屋はやはり白く、窓が無い───
その代わり灯りが煌々と付けてあった。
六畳程の広さの部屋の中央には簡素な机とパイプ椅子───
そして、此方と同じく相手も三人の男───
極端に言えば、白と黒。
囚人が入ってきたドアと反対方向のドアを挟む様にして、白の法僧衣を纏った人物が二人────
「彼が?」
「あぁ、そうだ」
「白」が抑揚の無い声で問うと───
先に机に着いていた黒の法僧衣がそう答えた。
囚人はその光景を見て小さく溜め息を吐き、一瞬、間を置いてから「黒」と机を挟むようにパイプ椅子に座った───
「で?何か用かい、神父様?」
トピック検索 |