あなたと俺は ––––– 。 ( BL )

( その後も仕事をこなして行き、時計を見れば約束の時間迄もう少しで、切りの良い所で作業を一旦止めて上司に事情を説明し数分間、外出しますと連絡をすれば会社を出て。少し足早に道を進めば朝よりかは人混みも無く比較的早く着いてしまうもコンビニの前に座っている高校生を見つけると何だか茫然と上を見ている。ゆっくりと歩み寄り其れを遮るように相手の視界に入れば前に立ち、確信は無いが取り敢えず声を掛けて )──…君が昼に電話してきてくれた子かな？

あー…、 っうあ、びびった、えーと、どうも、電話したものです。 ( どんな顔だっけか、そうそうこんな顔、なんてぼーっとしすぎて夢現になっていたところ目の前に見えたものは本物で、はっと我に返るとびくっと肩を揺らして。取り乱してしまい目を泳がせるが、まずは相手の問いに答えようと数回頷いて肯定する。 立ち上がると余計に相手の方が背が高いのがわかってなんだか引け目を感じつつも、鞄の中から例の封筒を取り出して相手に渡そうし顔を見上げると、やはり整っていて、自分の好みだなぁと考えたり。 そしてふと‘いい事’を思いつき、にっと口角をあげると差し出しかけた封筒を自分の背中に隠して。 ) これ返して欲しかったら、今日俺に夕飯奢ってください。 ( 封筒持ってきた代わりに飯を奢ってもらうという、何とも図々しい条件ではあるし下心を気付かれてしまうだろうかなんて思ったが、勢いに任せて言ってしまったのでとりあえず相手の返事を待つ。 )

( 声を掛けるなり驚く相手に此方も少し後退りし考え事をしていたのなら何だか申し訳無かったと気持ちになり暫し見据え。電話の主と聞き立った姿に風貌はこんな感じだったかと微かな記憶が再び巡り、封筒を返して貰えると思い手を伸ばし受け取ろうとするも何故か後ろに隠され戸惑い気味になり、そのまま相手の言葉を聞いては )返して欲しかったら…と言うのは脅しみたいだな。でも捨てずに渡しに来てくれた礼も兼ねて奢ってやる。だが、俺はまだ仕事中なんだ。終わるのが6時になるが…何処かで待てるか？──…そう言えば、まだ名前聞いて無かったな。( 少し気になる言い方だが返して貰えるなら奢るくらい良いだろうと軽い気持ちでいて。腕時計を見れば勤務終了まで2時間程、待てるかどうかを訊ねれば。この関係は手渡しで終わると思っていたが、これから食事に行く訳で、名前くらいは聞こうと思い )

そう、脅し。というか交換条件？ あ、なら何でも言うこと聞いてって言えば良かった、 …ほんとに奢ってくれるんだ。というか、葉山さんがここまで来れてるってことは会社も近いんでしょ？なら会社前で待ってますよ。 ( 脅しみたいと言われれば少し考えると笑顔で頷いて。脅しならもっと選択肢を選べるものにしておけばよかった、と後悔を小声で。案外すんなり条件を飲み込んでくれた相手は、見ず知らずの高校生に飯を奢れるほど懐が大きいというか、お人好しなんだろうか。 相手がここまで手ぶらで来ているということは、ここから会社は近いんだろう。なら会社の前で待っていられると。名前を聞かれれば、そう言えば相手の名前は知っているのに名乗っていなかったとはっとして。 ) 伊織。 要伊織です。 よろしく、葉山さん。 ( 自己紹介なんて少し恥ずかしさもあり照れ気味に名乗れば、握手をと手を差し出して。 )

──…はっ？脅し…って。確かに朝ぶつかったがわざとでは無くてだな…。謝罪が足りないなら謝る。ああ…要伊織くんだな…。( 冗談かと思えばすんなりと脅しと認めた相手に驚き開いた口が塞がらない。見たところ怪我も無ければ怒ってる訳でも無く寧ろ笑顔を向けてくる。面白がっているのかと思えば名前を言われ記憶するも差し出された手を見据え此方も握手を交わそうとするが、どうして脅すのかと頭の中が考えに一杯になり取り敢えず奢るのはその理由を聞いてからでも良いだろうと、手を握り締める寸前で止めて )…脅しって言ったよな。やっぱり分からない、何で俺を脅すんだ？

あはは、ぶつかったことは全然気にしてないですよ。 ( 驚きを隠せない様子とぶつかったことに改めて謝罪をする相手とを見れば律儀だなぁなんて呑気に思って笑って。握ろうとした手がまだ遠くにあるまま止まるのを見て顔を上げ相手の顔を見れば脅しというのが気になっているらしい。こんな顔がいい人に会えたのだからこの機会を逃したくないって思ったから、なんて女子みたいな本心を自分が言えば嫌がられるに決まっているし、かといって銃を向けるような脅しがしたいわけでもないから、ここは誤魔化しておこうと。 ) 高校生の遊びに付き合ってくれるくらいの余裕、社会人さんにはあるかなーって思って言っただけの、軽い気持ち。 理由は、今は秘密。 もう少し俺と仲良くなったら、教えてあげないこともないですけど。 ( 寸前で止まった相手の手を強引に握って上下にぶんぶんと振って。 )

…なら、良いんだが。大人の余裕か…生憎、毎日仕事なんでな…仲良くも何も俺は暇じゃないんだ。今日は封筒を届けてくれた礼だからな。( 脅した理由はぶつかった事では無いようで、それなら安心し表情の筋肉緩めて。しかし理由は別にあるらしくし相手の意図が全く読めずにいれば手を握られ激しく揺さぶられ何だかペースに飲み込まれている気がするも此方も社会人で、しかも初対面の高校生と仲良くする訳も無く今日だけだと念を押して。腕時計を見れは時間が大幅に過ぎていて慌て手を離し )…こんな時間か。俺は会社に戻らなければならない。会社の1Fにカフェがある、そこまで連れて行くから。着いて来てくれ。( 半ば一方的な感じで喋れば背中を向け歩き出し )

えー、つれないなぁ、 ( 学生ほど暇ではないのはわかっているが、相手の仕事はそれほど忙しいのだろうか。なら学生なんかの自分に構ってくれないかもしれないなんて思うと仕方ないと言ったように苦笑いを浮かべて肩を竦める。 急に離された行き場所をなくした手をチラッと見るが、どうやら急いでいるようなので先に歩き出す相手の後ろをついて、 ) はーい。 ( と短く返事をすると足早に歩く相手に隣を歩いて。 横顔をこっそりと見ながら、やはり整った顔をしているし、モテるんだろうなぁなんて考え、バレないうちに視線を逸らして。 )

…要くんも高校生なら俺みたいな奴より友達と遊んだらどうだ。( つれないだなんて、此方からして見れば相手は高校生で10歳近く離れていそうなのに寧ろ同い年の子と遊んだ方が話しも合うのでは無いかと隣に並んで歩く相手に思って。相手の視線には気付かず少し足早に歩いていれば、ちゃんと着いて来ているかどうか横目で確認すると、ふと相手の顔に此方も視線が行く。至って普通の今時の高校生だが、ここまでの経緯からして脅しはイケない事だが封筒を届けてくれる親切さはあるのだなと感じて。数分歩けば会社に着き中へ入り )…そこがカフェだ。終わったら直ぐに行く。何食べたいか考えておけ。あっ、高いのは無理だからな。( 店を指差し場所を教え。待たせてしまう事に気が引けるのか仕事を早く終わらせようと思い、一応礼のつもりで食事に行く訳なので相手の食べたい物をと思い言っては。去り際に手を伸ばし相手の頭上に手を置き一撫ですると急ぎ足でエレベーターへ向かい )

んー、まぁね。 でも今俺の興味が向いてるのは葉山さんだから。 ( 同年代の友人はいないわけではないが、過去にあった同性愛者は煙たがられるという経験から、自分からは同年代に深入りできなくて…なんて言えるわけもなく、軽く流すように返事をして。興味があるのは本当で、にぃっと口角を上げて笑うとそう言って。 案外すぐに着いた相手の働く会社のビルを見上げては、おおーなんて感嘆を漏らすも、すぐに去ろうとする相手に返事をする。 ) あ、はーい、 じゃあ焼肉食べ放だ、… うわ、 ( 高いのは無理と言われれば余計に高いものを思い浮かべてしまいぱっと思い浮かんだものを口にするが、伸びてきた相手の手が自分の頭に触れ撫でられると、今まで長い間されることのなかった感覚に言葉を詰まらせ、なんだか照れ臭くて顔も熱くなる。 去り行く相手の背中を見送りながら、もしかしてタラシなんじゃ、なんて思いながらも踵を返しカフェへ。適当に甘い飲み物を注文し、宿題でもやってしまおうかと席に座れば勉強道具を取り出して。 )

( 社内へ着きデスクの椅子に座り再び作業を始める。進めて行く内にキーボードの打つスピードが次第に遅くなって行くのは、彼の言葉が気になる為。先程言われた"自分に興味を向けている"と言うのは、どう言った意味なのか。益々相手の意図が分からない。しかし懐かれているだけなのだろうと考え込んでいると隣の同僚から声を掛けられ我に返る。考えすぎも良くない、とその後は今までの時間を巻き返すように仕事をし六時丁度に終えて"お疲れ様でした"と挨拶すれば鞄を持ちカフェへ向かい、着けば辺りを見渡し相手を探す。顔と風貌は覚えているので直ぐに見つかり歩み寄れば向かいに座り )──…待たせてすまなかったな。ん？勉強でもしてたのか？

あ、仕事お疲れ様ー。 ああ、俺通学時間かかるし家に帰ると元気な弟たちいるから勉強できなくて。 だからこうしてたまに外でやってんですよ。 ( 声をかけられればぱっと顔をあげ声の主を見ると、待ち人がいて労いの言葉をかける。やっていた宿題をさっさと片付けていると、相手から問いかけられ上記答えて。中学の時のクラスメイトたちと関わりがない遠くの学校に来れば、自分が黙っていればそれで3年くらいはすぎるだろうと考えた結果、通学時間のかかる高校を選んでいて。家に帰っても元気な弟たちをあしらいながらできる勉強は限られているため、時たまこうして外ですることも多く。荷物を持てば席から立ち、残りの飲み物をすすってゴミ箱へ。 ) えーっと、俺パスタか、ハンバーガーか、ラーメン食べたいです。 どう？安上がりでしょ。 ( 今ぱっと自分の腹と相談してでてきた候補をいくつか上げては指折り数えて。挙げた選択肢はどれもお金のかからないものの筈だと思えば指折った手を相手の前にずいとだし首を傾げて。 )

要くんは弟が居るのか。そうだったのか…何だか邪魔したみたいだな、すまなかった。( 相手の家庭環境や通学時間について教えられると勉強中に声を掛けてしまった事を悔やみ眉尻下げて謝罪をして。相手に弟が居る事が分かれば長男かと思い、構成は違うが自分も長男の為ふと重ねて )…焼き肉は諦めてくれたのか。そうだな、美味しいパスタが食べれる店を知っているからそこにするか。それと行く前になんだが…飯は奢ると約束した。封筒を返してくれないか？( 色々と候補を挙げてくれた相手に高いものは駄目と言った自分が情けない気もしてきて。相手の挙げた候補の中で時々行くパスタ屋にしとようと思い告げると封筒の話を持ち掛けて。忘れていた訳では無く今返して貰うのが良いと考え近付いた瞳を真剣に見つめ手を出し )

そ、2人も。 毎日はしゃいでもはしゃぎ足りないみたい。そういう葉山さんは兄弟は？ …ん？ああ、別に大丈夫ですよ、たかが学校の宿題だから大したことないし。 ( 2人の元気有り余る弟の姿を思い浮かべれば苦笑して。 相手は落ち着きがあるように見えるが、兄弟はどうなんだろう。純粋に疑問を持って質問するが、謝られては何のことやらと首を傾げ、その意味に気づくと首を横に振って。宿題といえど進学校ではないし軽い方だとは思うので平気だと。 ) 封筒届けたくらいで焼肉は流石に、でしょ。 やった、 … 制服でも入れそうですかね？ っああ、忘れるところだった、返さない気は全くなかったんだけどすっかり抜けてた…はい、どうぞ。 ( 焼肉とは冗談で、流石についさっきまで赤の他人だった人に焼肉を奢ってもらうのはおこがましすぎると肩を竦めて。 相手の勧めるところなら、と思ったが、相手のような人の行く店は高校生が行ってもおかしくないだろうかと不安で首をかしげる。 封筒を返してと言われるまで自分が持っていたことをすっかり忘れており、慌てて鞄から出せば差し出して。 )

俺は姉が一人いる。二人とは賑やかで楽しそうだ、それに要くんは良い兄みたいだな。( 自分には弟や妹が居ないので賑やかとは遠く少し羨ましい気持ちにあり、家に帰れば面倒を見る良い兄なんだなと相手の表情を見つめ思えば差し出された封筒を受け取り微笑んで )…まぁ、スーツと制服じゃあ焼肉も行けないしな。ああ、俺の行く店は制服を着た人なんて沢山いるぞ、安いし美味いからな。忘れてたなら今言って正解だったな、封筒に関しては本当に助かった。改めて礼を言うよ、ありがとう。そろそろ腹も空く頃だろ。行こうか…。( 焼肉も行けなくは無いが、やはり服に臭いがつくと後々面倒だろうと思い目尻下げ。制服でも行ける所と聞けば頭の中で疑問が浮かび自分は外食が多く行く店は大抵安くて美味いがモットーで、相手も男だし特に雰囲気も気にせず話せればと。封筒を軽く持ち上げ再び礼を言えば夕飯を食べに行こうと鞄に入れ椅子から立ち上がり )

へぇ、落ち着きあるからお兄さんかと思った。上にいるの羨ましいなぁ。 俺？んー、俺全然いい兄してないと思う、 ( 上にいると言われればぱっと見では想像できず驚いた様子で。と同時に自分は上が欲しいと思うことが今までに何度もあるので羨ましがり。 いい兄、とはどうなのだろうか、結局自分の好きになる相手は同性だし、それが周囲にばれればもしかしたら弟たちが被害に遭うかもしれない、という危惧が常にあるのか、自分が良い兄だとは到底思えず視線を落とすが、すぐに上げては会話を続け ) はは、臭い染み付いたら大変だからなぁ。 良かった、安心した。 別に、俺脅したし、どっちかというと悪い奴の部類かもだし、葉山さん気をつけた方がいいかも、なんつって。 …はは、俺の腹が返事した。 ( 制服でも大丈夫ならカジュアルな店なんだろう、安心して胸を撫で下ろし、美味いと聞けばわくわくしてきて。改めて礼を言われればなんだかむず痒いのか、悪戯っぽく笑っては自分を悪い奴だなんだと冗談をつらつらと並べて。 タイミングよく鳴った自分の腹を抑えては笑うと、相手に続き立ち上がって。 )

まぁ、家に帰れば目上の人としか接して来なかったし今は社会人だからな。…脅したとしても普通は封筒を渡さないだろ？気を付けろと言うのは、また脅されるって事だろうか──…ふっ…随分と大きな返事だな…あっ、すまない。( 立ち尽くし答えていると相手の腹の音が聞こえ思わず吹き出してしまい、取り乱し笑ってしまった事に咳払い一つし謝罪して。鞄を持ちカフェから出ると空は暗く街頭の灯りが光り帰宅する人波が目立つ。左右を確認しゆっくりとその中へと歩き出し )

ふーん、俺の場合みーんな下だから、逆にそっちに合わせてるから子供っぽいのかな。 はは、そんなに身構えなくても大丈夫ですよー。 …葉山さんも笑うんだ、 ( 常に年上と接する環境が相手をそうさせているならば、自分は親戚の中でも年上で年下ばかりの相手をしているから相手のような大人の風貌がないのか、なんて思えば苦笑いを浮かべ頬を掻いて。 ふと相手が笑ったのを見て、つり目であまり笑わなそうな相手でもそんな風に笑うのかと、少し心臓が高鳴ったり。出会ったばかりの人にこうもときめいてしまうとは自分も安いなと呆れ半分、相手を直視できない半分で慌てて目を逸らして。 店の場所は分からないので相手について行こうと後ろを追いかけ、隣を歩く。 )

俺は生まれてから弟も妹も居なかったが、もし居たら要くんのような子を弟と呼ぶべきなんだろうな。君は脅したり俺に興味を持ったり…正直何をしたいのかよく分からない。おい、人を仏頂面みたいに言うな…。店なんだが、そこ曲がって直ぐだ。( レストランへと行く道のりを並んで歩けば、高校生と話す機会も無いし自分も相手との会話をそれなりに楽しんでいるので、もし弟がいたらこんな感じなのかと視線を上に向け思考して。身構えると言われても今日出会ってから幾度と発言されたワードが頭に浮かび今の正直な気持ちを呟いては視線を合わせ肩を竦めて。確かに笑う事は少ないが無表情でも無く何だか腑に落ちない気持ちになり顔を顰め前を見据えて。そろそろ着く頃だと前の曲がり角を指差して歩き続け )

はは、俺みたいな生意気な弟はすぐ嫌になりますよ、きっと。 ( 常に兄であった自分が相手の弟になるなんて想像も出来なかったが、存外自分は相手のような大人と話している時は兄でいる必要もないので一転して弟のように見えるのだろうか。しかし自分はこんな生意気な餓鬼だし、と思えばへらへらと笑いながら自嘲を。 ) 興味がある、だけじゃ理由になりませんかね？ っはは、イケメンだけどつり目だから、とっつきにくいかなって思ったけど勘違いだったみたいだ。 ( 顔がいいし、ぶつかったのは何か運命かも、とまでロマンチストではないが、ほぼほぼ興味のみで行動していて、理由を聞かれてもうまく答えられる気はせず首を傾げて。 顔を顰める相手を横目で見れば笑って、つった目で厳格そうな雰囲気も雰囲気だけで、案外話しやすい人で安心し。そして偏見で言ったことに対して、ごめんなさい、と付け足す。 相手の指差した曲がり角を曲がればそこにはいい匂いを発する目当てのものらしき店が。 おお、と感嘆を漏らしつつ、自分の腹は早く食べたいと言っているので足早に店に入り、早く早く、と相手を催促して。 )