常連さん 2024-10-29 22:26:54 |
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「なんでこんな所に……こんな車…!」
ポルシェ911といえば言わずと知れたモンスターマシンで、車に詳しくないこっちだって知っているものだ。それでいてあの独特なワイドボディとウイング、それに加えてわざとらしいGT3だなんてエンブレムがあれば、今目の前にいる車がまったく別次元の相手だと言うのがわかる。このままプロドライバーのサーキットに持っていったて良いような車がどうしてこんな辺境の峠にいるのかはわからないが、あの車からは心底つまらなそうなオーラがにじみ出ている。
私達がつまらないというよりも、レースそのものに対する情熱やテンションというのがまったく感じられず、寧ろどこか悲しげなようにも見えてくる。なのにその車は異常な程に速い、S2000がこっちの付いていくのがやっとの領域に入ったというのにまだぴったりと張り付いていて、そこに限界の雰囲気は微塵もない。世界一の車メーカーが作った最強の車両、そのダウンフォースとサスペンションにかかればこの程度のコーナーはスキール音も鳴らさずにぬるりと、不気味なほどよく曲がっていくらしい。
エンジン音だけを響かせながら、物理法則を無視して走っていく銀色の車体は、哀愁漂う背中も相まってまるで幽霊を見ている気分だ。そんな姿もコーナー一つ抜けた先ではもう消えてしまっていて、どうやらオーバーテイクされたS2000のテールランプだけが見えていた。
「……ふぅ、まんまと幽霊にやられたね、私達。」
そうして一幕の勝負が終わり、すっかりスローダウンした二台でこの峠を走りきった。ここのゴールラインは廃小学校を過ぎたところで、ちょうどよくここには広いグラウンドに車を停めておける。S2000もお誂え向きのここに駐車しているはずで、お互いを讃えるとともにあの化け物の話をすぐにでも共感したい思いで車を降りた。
降りるなり小さく息をつき、車に張り付いた夜桜の花びらをつまみながら、バツの悪そうな顔でS2000の方へと声をかけた。
(/いえいえ!ちょうどいい感じでございます。覚醒イベントは楽しみですねぇ。
この後は自己紹介でお互いを認知してもらいましょうっ)
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