常連さん 2024-10-29 22:26:54 |
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「っうそ…!っ来るの!?ここで……!?」
体が前へと吹っ飛んで行きそうな程のブレーキの後、今度はシートへ縛り付けられるような加速が続き、相手に鼻を明かすことはできているみたいだ。無理やりなラインで失速した分は次のヘアピンでオーバースピードになろうとベタ踏みで解決したが、こんなサイドバイサイドのアウトから仕掛けるような奴は見たことがない。
だが、見たことはないだけでこんなにも身近に存在するものとは思うはずもなく、悠々自適なブレーキングの一瞬の隙を突かれてしまった。加速の分を受け止めていたブレーキの熱のせいか向こうよりもこちらは制動を長くとってしまい、赤い車体はコンマ数秒分前に出ている。その一瞬が大きな差になることは直感で理解していて、限界ギリギリのアタックには流石に目を見開かざるを得ない。
「っ゛……く…踏めないっ……!!」
ラインを塞ぐ側が今度は塞がれてしまえば、踏んだ結果最適な姿勢となるドライビングが発動をしない。ただでさえ踏むような場所じゃないキツいコーナーのインを外から押さえつけられればアクセルを抜かざるを得ず、一瞬にしてとてつもないフラストレーションが溜まってくる。
大きく凹んだ白いガードレールがここを抜けきる難しさを物語っていて、なんとか踏みたい気持ちを抑えて曲がりきる事だけに神経を集中させた。あと少し、あと少しでこのコーナーも終わって、立ち上がりで思い切り踏むことができる。相手だってラインを絞られているのは同じはずで、ここから立ち上がりならこっちにアドバンテージがあるのだ。それまでの一瞬が無限のように感じられて、息を自然と止めながらに相手との立ち上がり勝負へと入っていく。
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