常連さん 2024-10-29 22:26:54 |
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「んぇ……S2000……って無視!?」
そうしてしばらくあまり触れない夜風に当たって居ると、ここでは久しぶりに聞く他人のエンジン音が聞こえてきた。ここを使うのはいつも夕方からで、深夜帯にかけてはそう使うこともなく、まさか他にもここを使いに来る者が居たとは予想外だ。
さてそれならどんな相手が来るのだろうかと待っていれば、比較的小さなシルエットが心地良い音とともに現れた。赤い車体に鋭いノーズ、ホンダS2000とわかればこっちの排気量のほうが上だ、と鼻を鳴らしたい気分で、そろそろ帰ろうと思っていたがようやくバトルができるらしい。
と期待をしていたのだが声をかけられることもなく、目が合っただけでさっさとダウンヒルへと向かってしまって、まるで眼中にないと言われた気分だ。そんな態度をとられて、というか向こうがその気かは知る由もないが、孤独のホームコースで久方ぶりに出会った相手に対する興奮は冷めやらぬもので、すぐに愛車へ乗り込んでエンジンをかけた。ここのダウンヒルは序盤が低勾配高速コーナーの連続で、車両のパワーがモロに出てくる、こっちが出るまでのビハインドなんてすぐに帳消しにできるはずだ。勝負は追いついてからの中盤、ろくなストレートもなく低速コーナーが連続するストレス極まりない区間で、そこさえ抜ければ終盤のストレートになる。
「…っし、追いついた…!!」
あの赤い車体を捉えるまではそこそこ時間が必要だったが、中盤前のストレートでのアクセル全開が効いたのか、ようやく相手のリアをヘッドライトで照らしてやることができた。
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