三丁目のミケネコさん 2024-10-06 22:18:03 |
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ごめん……お待たせ。
( 先に着いて待っていた彼に近付き、申し訳なさそうな顔をして謝罪する。なんにも気にしていないどころか、気遣いを捲し立てた彼がおかしくてつい破顔した。「大丈夫だって何度も言ってるのに。彼氏かよ」くすくすと笑いを含ませながら軽口で返す。すでに同じやり取りをメッセージ上で交わしたはずなのに、対面でも様子を伺う彼の心配性がこそばゆかった。参考書を見繕いつつ、彼は恋人になった女性のことも羽のように扱ってきたのだろうかと考える。吹けば飛んでいき、少しのものに潰されてしまうか弱い女の子。想像上の誰かが彼の隣に並ぶのを思い描き、どんよりした気持ちで席に着いた。「……一応途中まで自力でやった英語の課題なんだけど、躓いたら聞くから暇潰しといて」思考を打ち消してそう言うと、鞄から文房具を取り出し参考書とともに並べていく。対面に腰掛ける彼の領域を侵略しないようこじんまりと環境を整え、彼に見られる手前まずはスペルミスの確認から着手した。「贅沢だなあ。主席の男を独り占め」通りかかる生徒たちの視線を感じながら、漏れ出すようにぼそりと呟く。彼はどのテスト前にも慌てて勉強する必要などなく、普段通りを継続すればそれで済む勤勉な人だった。時折二人で訪れるこの定位置で、ページをめくるしなやかな手に幾度視線を奪われたことだろう。図書室という静かな空間で、呼吸を潜めて彼を眺める女子生徒たちと何一つ変わらない心地で日々を過ごした。この詩的なかがやきを知ってしまえば、学校の誰もが彼を愛する素養を得てしまうのではと本気で思う。いくらでも愛されいくらでも選択肢がある人。彼が選ぶのはどんな人だろうと想像して、ため息が出る。答えは出なかった。 )
(/拙いなんてとんでもない……スムーズな場面転換をありがとうございます!
一点お聞きしたいのですが、遼くんは進路についてどのようにお考えでしょうか?お互い三年生ですし、勉強の最中そういったことに思いを馳せるかこともあるやもと思いお伺いした次第です。桃李は努力でそこそこ勉強ができるタイプなので、大学に進学かなあと考えております。もし何かお決まりでしたらぜひお聞かせいただけると幸いです!)
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