可惜夜 2024-09-16 17:35:11 |
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「ふ…宏樹の言うように、私たちを模る明確な呼び名は存在しないが……嫁入り前の生娘のような者たちが多いからね。せめて妖異やら幽鬼やら、可愛らしく呼んであげておくれ。嗚呼、一つ言い忘れていたが、この暁闇街にヒトの子は殆ど居らぬ。例え邂逅したとしても、お前さんのように可愛らしい性質の子が多い故、喧嘩は止しておくれよ?」
付かず離れず着いてきていたかと思えば、誘拐との言葉に素早く距離を詰める様子に仔猫を想起し、あまりの微笑ましさに笑みが深まる。行動とは対照的にムスッと不貞腐れた表情は崩れず、それもまた愛らしさを感じさせて。やはり彼を選んで正解だったらしいことを再確認し、満足心から鷹揚に頷きを一つ。街に着いたならば如何様にして可愛がろうかと策を練っている間に、街の前まで辿り着いていたらしい。小石まじりの土道に突如として現れた表長屋は奥まで目を滑らせどズラリと並んでおり、一つ裏路地に入れば此方もまた裏長屋が延々と続いている。いずれも瓦葺きの土蔵造りで、寸分の狂いもなく並んでいる様は壮観で。かつてのヒトの子は、彼方で江戸と呼ばれた時代の街並みに類似していると話していたように記憶している。であれば、化け物などと呼ばれるより、幽鬼等と呼び掛けられた方が雰囲気も合っているように思えて、冗談交じりに話してみせ。襲われる云々の話が出たため、漸く彼に告げていない内容を思い出し、こほんと態とらしく咳払いを一つ。暁闇街には滅多にヒトの子が訪れず、精神的に難ありな場合が多いためヒトの子同士が衝突しやすい傾向にある。可惜夜としては愛らしいヒトの可愛らしい喧嘩を何時迄も見ていられるため、寧ろ衝突してくれと願っているところもあり、つい言葉に愉しさが滲み。
「ん……これは、特段深い訳は…いや何、宏樹も街の者たちも並べて愛いと思ったのだ。お前さんが心配しているようなことは何もないさ。さて、久方ぶりにヒトの子が来訪したからな、皆、宏樹とお近付きになりたくて仕方がないらしい。もう幾らか此方へ寄るといい…此処の者たちは存外手が早いぞ?」
表情を指摘され、反射的にパッと口元へ手をやる。愛しさのあまり顔が緩んでいたらしいことを悟り、やり場のない気まずさから幾度か頬をムニムニと揉み。素直に認めると、普段の己から出てくるとは思えない澄んだ感情に心地悪さを覚える。これ以上、得体の知れない気味悪さに取り憑かれてはなるまいと話題を変え。実際、久しぶりのヒトの子に興味津々と言った様子で街の者たちが集まってきており、剰え手を伸ばそうとしている者も見える。牽制したところで、餌を眼前にぶら下げられた獅子の如く欲求に忠実な彼等に通じる訳もなく。此処まできて奪われては堪らないと、チラと彼がいるであろう方向へ見返り、傍へ寄るように小さく手招きをして。
(/ひょぇぇぇぇ、お二方とも可愛い&最高すぎて…!澤田様をメタメタに甘やかして、我儘がちゃんと言えるようになるまで真綿と可愛いもので包んであげたい…!西本様にもガンガンうざ絡みして、突き放されても爪が食い込むくらいの引きの悪さを見せてドン引きされたい…そんでもって1mmくらいおもしれー男認定されたい…!暁闇街に至るまでの経緯も好みの仄暗さで、控えめに言わずとも好き過ぎました!こちらも、早くお二方に邂逅したくワクワクドキドキが止まりません!!秦野様と可惜夜の仲がもう少し進展し次第、嫦娥には当て馬ムーブをかましてもらおうかなと考えておりました…!)
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