可惜夜 2024-09-16 17:35:11 |
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「そんな、現代社会も良く知らないヒトの形をした化物の癖にそれっぽい事ばっか言って…。世界に1つだけの何とかってやつは、この世界にもあったんだな。」
まさか相手のような人ならざる者に説法を説かれる事があるとは思ってもおらず、くだらないと言わんばかりに一蹴する。有名な歌の歌詞にもなるように自分は世界で唯一の存在だと思う人は多いだろうが、自分にとってはただの慰めでしかなく、殆どの人間が似たり寄ったりで特別なのはほんの一握りだけと思っていた。社畜バツイチの一般人男性は日本だけでなく世界で見たらより一般的になるだろう。だから辛いとも思わないし、同情で周りの気を引くような卑怯な奴にはならない。
そして此方の問いに対して、ブーメランのように説教臭い問いが返ってくると表情は徐々に暗く歪んでいく。その時は相手に言われるがまま、ギシと奥歯を噛み締めるしか出来なかった。温かく楽しい食卓を囲んだのも、安らかな眠りについたのも、記憶に居るのは何年も前の若かりし自分。趣味の音楽もCDやレコーダーは物入れの奥底で眠り、持っていたギターも弦は錆びつき埃を被っている。会話をする人間は歳を重ねるごとに減っていき、数ヶ月前に最後の1人も出て行った。まさに全てが相手の言う通りだった。尽く図星を突かれていくと体の芯の部分が痛む。鋭い針で刺されるのとは違い、返しの着いた槍で一突きされ、引き抜かれるその時まで痛みを与えるようだった。破綻している事をひた隠す自分への恥じらいか、得体の知れない化物に哀れみの目を向けられた事への怒りか、熱いものが込み上げ身体の末端まで巡って行く。客観的に見れば化物は愚かな人間に目を覚まさせ現実を見せてやろうとしているだけだ。だがそれでも自分は上手くやっているという夢を信じて止まなかった。たった1人で身を粉にして働き社会の一部として生きる事は普通で、ギリギリだろうと自分だけは破綻せずに上手くやれていると思わなければ、今の自分は普通じゃない本当に可哀想な人になってしまう。自分を守れるのは自分だけ。その言葉通り、心に武装をし夢を見る事で守ってきた。それを簡単に崩されてしまってはたまったものではない。相手の言う通り幸せな生活と余裕があれば流せた事だろうが、此処で黙っているだけではいけない、何か言い返さなければいけないとボロボロのプライドを建て直そうと必死になる。相手の顔が見える隣まで大股で歩み寄り、見上げると同時に暗がりに浮いた白肌の相手をキツく睨みつけて言葉を吐き捨てる。
「……本当、不躾なも程があるだろ。俺は俺なりに上手くやってんだ。…ヒトを敬いたいのか、それとも馬鹿にして弄びたいのかどっちなんだよ。お前はただの変態化物じゃなくて、人の生活に土足で踏む混むクズだ。そんな奴に俺の事も彼方の世界も分かるはずない。」
いつもなら棘を吐くことで少しは楽になる筈だが、先程刺された槍の返しが引っかかってしまっているのだろう、傷が癒える事は無かった。それにこんなにムキになって余裕の無さを露呈させては相手の思う壺だっただろう。やはりこれ以上相手と一緒にいては精神が保たない。さっさと街に着いてこの化物とも離れた方が良いかとも考え。やり切れないような、不貞腐れた表情で「…それで…街にはまだ着かないのか。」と一言。
(/秦野もかなり臍曲がりなので第三者きっかけの方がより近付きやすい気がするので、当て馬モブさん大賛成です…!もしご要望あればキャラの方も此方からももう一体提供できますので!
意地悪な可惜夜様も背後の癖に刺さりまくりなのに、かっこいい可惜夜様も見れるなんて幸せこの上ないです…!!!)
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