可惜夜 2024-09-16 17:35:11 |
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「…そんな事言われて誰が2度もお前の前で驚くかよ。…はぁ…冗談であってくれ…。」
この化物のくどい台詞は読んだ事もない官能小説の台詞を想起させ、それが自身に向けられた物だとすると吐き気さけ催す。人間に対する執着が色欲に駆られての事で、もし相手の言うように掻き抱かれれば、死より屈辱的な何かが待ち受けて居るかも。相手が理性と衝動の衝突に?いている様は大きな背中に隠れて見える筈もないが、見たくも無いもので周りの暗い景色に視線を移す。そしてどうか全て冗談であれという祈りをポツリと呟き、此奴の前では2度と恐怖を見せまいと自身に誓った。
まず相手の名前を知る事はできたが、あまりに何度も自分の名前を繰り返し口にされるとむず痒い気持ちにもなり「あっそう…」と一言だけ返事をする。先程の失敗を踏まえれば余計な事は口にせず、感情を鎮めて大人しくしている事が得策であろう。化物相手に愛想を振り撒く必要も無いと考え、以降は此方から会話を振るのも辞めておこうと口を閉じる。しかし相手から話題を振られてしまっては話さない方が不自然なので一呼吸置いて出来るだけ感情を沈めてから口を開く。
「俺の生活は現代人にしたら案外普通の事で、地獄って程でも無い。特別に何かあったとか、別に無い。良くある事だし、俺は上手くやってたし、俺は別に何も、…。」
振られた話題はよりによって"彼方"での生活について。しかも不幸な内情を聞き出そうとは、周知の事だがなんて悪趣味な化物だ。5年間の夫婦生活が解消されてからこの数ヶ月で最も触れられたく無い、散々聞き飽き話し飽きた話題。やっと落ち着いていた所で再び穿り返されると気分も悪い。声色に出ないよう細心の注意を払ったつもりだが、内心私生活が破綻しかけていた事を悟られまいとする気持ちと、それは絶対に自分のせいでは無いと思いたい気持ちが鬩ぎ合っていた。
元妻に対しての未練は一切無い。でも彼奴がくだらない愛情を求めたせいで俺の未来ある生活が崩れていったんだ。俺は十分な愛情を注いで来たから5年も続いたというのに、それでも足りないと求め続けたから俺の世間体を犠牲にして彼奴を手放してやったんだ。寧ろこの自己犠牲を賞賛されたい。と一瞬思考に走るが今はそんな事はどうでもよくて、相手の言い振り的に此処は社会で地獄を見た者が来るらしい。そんな人間五万といて、これから行く街にも人間が居る事は期待出来る。しかし、やんごとなき事情があって社会に苦しめられる人間もいれば、そもそも社会に順応出来なかった人間もいて、近年では後者の場合も増え社会不適合者とも呼ばれる。勿論自分は前者で、仕事疲れが溜まっていた結果、この世界に送り飛ばされてしまったのだ。だから街中で自分とは相反する人間に出会ったとして、現世へ戻れるよう協力できるかは微妙なところ。それでも自分は社会からあぶれた人間には該当しないので、早く戻れる可能性も高いかもとありもしない余裕が生まれる。先程の発言から続けていけしゃあしゃあと自分と今までの人間は違うという事を延べて。
「まあ確かに少しは仕事が忙しくて疲れてたけど、それだけでこんな所に来させられるなんて、それこそ地獄だ。此処にくる人間は人生詰んだ可哀想な奴が多いのか?もしそうなら俺は上手くやれてたんだから、早く元の生活に戻らなくちゃいけない。明後日からまた大事な仕事があるんだ。」
(/こんなに詳しく教えて頂いてありがとうございます!!本当に素敵過ぎる世界観で感動してます…。ヒトに戻る為に人の魂を貪る人外さんは、喰べる度にヒトの心が失われてゆくんでしょうね…哀しい…けど此方としては美味しい設定です…!あとは可惜夜様に魂を喰われた元ヒトの子とのエンカウントとかもありそうですね(完結したとしてもスピンオフまで出来ちゃいそうな予感…)。秦野目線、なんやかんや言いつつも危険な誘惑から守ってくれる可惜夜様に揺らいでしまうかもしれないです……。とにかくめちゃくちゃ素敵です!今の所大満足ですので、何かあればお知らせします…!!)
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