可惜夜 2024-09-16 17:35:11 |
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「あい分かった、重々気をつけよう。然れど…あまり可愛らしい反応をしてくれるな。私は慮外にお前さんを愛寵しているらしい。その吐息すら愛おしく、卑しい色慾に乱されるのだよ。此処でお前さんを掻き抱けないとは…斯様に口惜しいことはない。は、ぁ……先刻のお前さんの顔…アレは私以外に見せないでおくれ?これ以上に悋気深くなっては、お前さんをどうにかしてしまう」
可愛いヒトがいるであろう場所をチラリと振り返り、聢と着いてきているか確認を一つ。厭忌の籠った表情で再三の注意を促す一方で、此処で別れることはしないのかと鷹揚に微笑して頷いてみせ。気が触れても可笑しくない状況だろうに、何と気丈なのだろう。やはり、彼は今までに邂逅した凡ゆるヒトの子の中でも、特に愛らしく己が手の中にいることを懇請させ得る何かがある。斯くして暁闇街に案内しようというわけだが、魂を喰べることすら惜しく思える。あまりに可愛らしく在られては暁闇街へ辿り着く前に手を出してしまうと素直に彼へ云い、柳眉を八の字に歪めてみせ。彼と出逢い幾許の時間も経ってはいないが、健気な姿勢から果ては吐いた息に至るまで、まさに彼の総てを愛おしいと思ってしまうのだ。愛い面を一つ一つ振り返っていれば、先刻近づいた際の表情を思い出し。目一杯見開かれた両眼は此方を映しているようで捉えきれておらず、壊れた発条仕掛の玩具のようにハクと同じ動きを繰り返す唇。此方が離れれば、途端に呼吸の仕方を思い出したように膨らむ胸郭。その一連の恐怖に縛られた様相が愛らしく、悉皆心が奪われてしまって。今すぐ愛しい彼を何とかしてしまいたいと、甘美で淫靡な震えが背筋を駆け巡る。先は抑えたれた衝動が再び逆巻く予感に、熱く艶っぽい溜息が溢れ。何らかの間違いあって彼に触れた暁には、化け物よろしく理性が焼き切れたままに貪ってしまうと、間違えが起きないよう胸の前で両腕を組む。思わず力が入りすぎて爪が食い込んでしまったが、どうせ袖に隠れて見えぬのだ…一向に構うことはない。そして、街外の連中と同等の位置まで成り下がらなければ、それでよいのだ。
「名前とな…嗚呼、諱…否、私の場合は諡かね。まぁ、どちらでも良いな。私は…そう、可惜夜と呼ばれていたのだったね。お前さんは…秦野、宏樹…ひろき……ヒロキ…ふむ、宏樹というのか。実に口馴染みがよい素晴らしい名だ。宏樹…ふふ、これは何とも…つい呼びたくなってしまうな」
街に向かい始めたところで名を尋ねられ、名とは何だったかと歩みを遅くする。暁闇街の仲間同士でも、"お前さん"やら"そこの"やらと名で呼び合うことが少ないためか、久しく名で呼ばれていないことに気づく。以前は何と呼ばれていたのだったか、記憶を探ること寸刻。己が享楽のため醒めない夢を見せ続けるものだから、いつからか可惜夜などと呼ばれるようになったのだと思い出す。己が名よりも、可愛いヒトの名を知れたことの方が重要で。姿、言動も可愛ければ、名も愛らしいのかとつい意味もなく名を口にしてしまって。歩きながら鼻歌交じりに何度も彼の名を口遊み、身体に馴染ませてゆく。折角、ヒトの子から話題を提供してもらったのだ。此方も何かしら話題を振ろうな、と彼の名も口に馴染んできたところで問いを投げかけ。
「…して、宏樹よ。お前さんは、何か"彼方"で……いいや、彼方ではどのような生活を送っていたのかね。此処に来るようなことなのだから、まさか幸せ一色だったわけではあるまい?彼方ではどのような地獄を見てきたのか、此方しか知らぬ私に教えておくれ」
(/基本的に魂を喰べられてしまった場合は、記憶やら人格やらのその人らしさが消え、身体だけが残り、その身体も付き添う人外さんによって喰べられるか、自然に消滅するか異なると考えていましたが…魂を喰べるためだけに可愛いと慈しむのも動機づけが弱い気がするので、人外さんと情交したヒトが魂を喰べられ、人外さんや暁闇街、現世に未練が強ければ新しい人外さんとして生まれ変わる……って感じにしようかなと思います…!生まれ変わった後は、元の人格や記憶を引き継ぐも引き継がないも個体差ありとします。もし、現世に未練があった場合は、それこそ永遠に現世へ戻れない哀しきモンスターが爆誕してしまうわけですが…ヒトの魂を喰べればヒトに戻って現世へ帰れると考えて、ヒトを捕食しまくってる人外さんになってるかもしれませんね…!人外さんの話が出たので、序でに街の内外で人外さんの立場がどのように変わるのかも載せておきます!暁闇街の人外さんは、ヒトの子至上主義で余程のことがない限り、身体や精神を傷つけようとはしないです。魂を喰べる理由は特になく、ヒトが小腹空いたからとスナック菓子に手を伸ばす感覚とほぼ同義。魂を喰べる迄の過程を愉しんでおり、本能のままに喰い散らかす街外の人外さんを嫌っています。街の人外さんは、魂を喰べれば現世に帰れる、ヒトに戻れる、大きな力が手に入る…など何かしらの益を求めているため、魂を喰べるためなら平気で身体も精神も傷つける上に、喰べ方もまさに"喰い散らかしている"に近いです。ヒトを溺愛する街の人外さんを小馬鹿にしている一方で、中々ヒトの魂を喰べられないためおこぼれに与ることが多く頭があがらない…といった感じです。街の内外で大きな力量差はないですが、おこぼれ云々の関係上、外の人外さんが街の人外さんに強く出ることは滅多にないです。また、街の内外で元来住んでいた人外さんとヒトから生まれ変わった人外さんに大きな偏りはなく、それぞれの思想をもとに好きな方で生活しています。可惜夜は元々暁闇街に住んでおり、己の欲のためだけに魂を喰べて暮らしていました。そのため、人外さんもヒトの子も関係なくまぐわい貞淑とは程遠い生活を送っており、中には人外さんへ生まれ変わったヒトの子も存在したかもしれません。己の欲望のまま行動しているため、余程気に入った存在でない限り、記憶に留めているかどうかすらも怪しいです。今は秦野様がダントツのお気に入りで脇目も振らず心血を注いでいるため、例え秦野様が人外さんになっても交流が続くと思います…!長々となりましたが、現段階で考えていた設定はこんな感じでした!もし、付け加えやこの方が面白い!動かしやすい!というところがあれば、じゃんじゃん変えていただいて構いませんので、お手隙の際にでもお知らせ下さいませ…!)
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