名無しさん 2024-09-04 22:22:15 |
|
通報 |
……。
( 黙って話を聞いた。ただ無表情で、声をくぐもらせていく相手を見つめていた。右手に持った缶を呷る気にはなれない。酒の肴にもならないような話を引き出したことを、少しだけ後悔した。猫を被った自分なら、他人の不幸話を聞いてどんな反応をしただろう。同情するように眉を下げ、その背中を撫でて慰めるようなことをしたのだろうか。しかし、今の俺にはそれができなかった。自分なんかの手が、彼を慰められるとは到底思えなかった。左手を見つめ、空を固く握りしめる。乾燥した手のひらと同じくらい、心は乾いている。話しにくい過去なら断りゃいいのに、律儀に話しやがって。不器用な自分を惨めに思う気持ちは、いつしか相手を責める言葉に変わっていて。責任転嫁も甚だしい。何か不用意な言葉をかけ、余計に傷つけたくもない。それならいっそ、何も言わないに越したことは……ぐるぐると考え込んでいると、突然立ち上がった相手に驚き視線を上げて。こいつ、こんなに赤い顔をしていたか。疑問を持った頃には、相手はその場でこけて壁に体を打ちつけていて。「…お、おい、大丈夫かよ」流石に心配になり、彼に近づいて遠慮がちに顔を覗き込み。酔った、という声に「だろうな」と反射的に返して。立ち上がらせようと彼の脇の下に腕を通し、体を支えて。これまであまり見せることがなかった心の脆い部分を知って、やけに熱い体温も相まって、何故だか、落ち着かない。こんな言葉が慰めになるわけがない。分かっているというのに、声をかけずにはいられなかった )
これ以上飲むのはやめた方がいい。水でも飲め。それと、何があったのかは知らねえし、どんな言葉をかけるのが適切なのかも分からねえ。過去のこと掘り返した俺も悪いが……その、あんまり、気に病むなよ。
| トピック検索 |