東 2024-07-20 01:24:27 |
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──ん?
(卒業式以来久々に──って言っても、数週間ぶりとかなんだけど。とにかく体感久々に会う友人(まー言っちゃえばフツーにサト)とお茶してたら、唐突にスマホが鳴った。テーブルの上に置きっぱだったそれに視線を落とし、目に留まった漢字一文字に頬が緩みそうになってしまうのとほぼ同時に
“なに誰?例の推しピ?”
なんて、向かいの席に座ってるサトが身を乗り出して画面を覗こうとしてきたもんだから。“わーっ!”ってでかい声出しながらスマホを手繰り寄せ、必死に隠しつつメッセージを開いた。ここ店内だし、私めっちゃ不自然だろうし、てかいつの間に私の気持ちが同クラの子にバレてたんかも結局謎だけど。もー知らん。)
ふっ……なはは。なんこれ不良品?写真上手くてウケる~。
(明らかに無駄な映りの良さと添えられていたメッセージも相まって、写真に収められている傍から見ればくだらないようなトラブルにけらけらと声を出しながら笑ってしまった。目の前でサトが引いてるのが分かったけど、ウケるものはウケるんだからしゃーない。まだちょっと笑いながら、『わろた。どこ製だよそれ。』の一言と、謎のゆるい生き物が描かれた“どんまい”スタンプをテキトーに返しておこう。──なんか、いい意味で思ってたんと全然違ったな。一通り笑い尽くした後、メッセージに対する笑いとは違う別の笑みがふっと零れた。
あの日──卒業式が、てっきり最後なんだと思ってた。そうなったとしても悔いはないって、あの時本気でそう思ったけど……実際は今もこうして、当たり前みたいにあいつとメッセージを交わしている。それも、私からの一方通行じゃなくてわりとあいつからも。諦めなきゃって思ってたのに、一度は諦めるつもりでいたのに。あの日私の袖口を掴んできたあの手が、そうさせてはくれなかった。それからもずっと、他愛ないメッセージを送ればすぐに返事がきて、かと思えば今度は向こうから他愛ない内容が届いて──その度に嬉しくて、ああ好きだなって思う。それだけで胸がいっぱいで、募る思いを挙げればキリがないけど……今はまだ、このままでいい。このままがいいや。
画面を見つめたままぼーっとしてたら、そろそろ帰ろうという友人からの呼び掛けでふと我に返る。結局誰だったのかなんてついでに聞かれたけど、それはメッセージの話なのか推しピの話なのか。)
ん~?こいつ。
(機嫌がよくなっていた私は、席を立ちながら手にしていたカバンの隙間からポーチ……のチャックに付いてる青と白のそいつを、チラッと覗かせてしたり顔で見せつけた。案の定サトは“はあ?”って顔してきたけど、さすがにヒント出しすぎっしょ。てかもう答えじゃんこれ。恥っず。だから、これ以上は教えてやんないよ。)
(/原作の完結にアニメ化、おめでとうございます!そしてまさかの……夢のようなお時間を本当にありがとうございます。大切に大切に受け取りました。せめてものお礼にというのは烏滸がましいですが、お返事せずにはいられませんでした。お相手様に届くことを祈って──。)
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