さすらいの旅人さん 2024-05-06 23:09:02 |
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来ると思ったよ、来るな。
おまえの腹事情なぞ知るか。
それに、どうせ暇とは何だ。おまえと師匠以外誰も来やしないのだ。別に良いだろう。
(薔薇色のキャンパスライフを渇望していた頃、乱雑に戸を叩かれたのも束の間、四畳半の北側に位置する扉が開かれる。そこにはまるで月の裏側からやって来た異星人、表現を変えればぬらりひょんのような風貌の男、我が宿敵であり盟友でもある小津がいた。私はのっけから矛盾する一言を放ち、相手の物言いにぶつぶつと文句を溢しながら出迎える。しかし、宇宙ゴミのような数多の生活品が散らかっている部屋に小津がいるという事実、私にとって妙な心地よさを感じられるのは否めない。小津を見遣れば、不摂生から手足がすっかり痩せ細っていて、普段よりも数段顔色が悪いように見える。朝飯を抜いたのだろうとおおかた予想がついた。懐具合に余裕が無く、もやしや魚肉ハンバーグで命を繋ぐ私とは違って、小津は此処よりも広く小綺麗なマンションに住んでいて、なおかつ潤沢な物資があるはずだ。さては仕送りの打ち切りにでも遭ったのか。それはともかく、小津から朝飯のお誘いとは、愉快にも程がある。きっと天変地異の前触れで、明日の京都五山には雪が降り積もるに相違ないと思われた。一方、日夜の寒暖差と連休明けによる倦怠感で体が鉛のようになって、暗澹たる人生を送っているようにも思える今こそ、舌があの味を欲していた。飯に誘われるのも悪い気はしない。私はもれなく二つ返事で了承した。組まれた腕を払い除けて立ち上がり、机上で重なる参考書群に埋もれていた財布を掴む。相手に目線を送ってからつかつかと歩き出して、下鴨幽水荘が面する道路へと出た。)
こら、くっ付くな。……小津にしては、妙案を思いつくではないか。寂しいのか。
(/こちらこそです。背後は一旦失礼しますが、展開の相談等がある際には、気軽にお声掛けくださいね。)
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