さすらいの旅人さん 2024-05-06 23:09:02 |
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こんの、天邪鬼。そうさ。俺は寂しい男だ。
寂しい者同士ぬくぬくして何がたのしい。
むさ苦しくなるだけだ。
(小津の猫撫で声とは、一体全体誰得なんだと有識者に問い糺したくなる。しかし連日ぐずついた天気が続いていたから、うららか日和で心弾むのは捻くれ者でも理解できる。嗚呼、こんな時にこそ黒髪の乙女が私の隣で微笑んでくれたら!現実は奇なり。妖怪が私の側をくねくねと寄り添い歩く始末だ。こちらの気も知らずに……いや、解っていてのうのうと歩くのが小津という男だ。今でもサークルに顔を出して、まるで吟遊詩人のように噂を吹聴して回っては、あちこちで敵を作っているという。まったく末恐ろしい世の中だ。御免蒙る。出町柳の学びの園に張り巡らされた赤い糸を斬りまくった元:「恋ノ邪魔者」としては、心休まらぬ思いではあるが、私はかく世とは断絶したのだ。悪友とそうこう駄弁っている間に糺の森へと辿り着いて、お目当ての屋台が見える。小津の隣に座り、軽やかな風鈴の音に耳を澄ませば心安らかになって、じきに注文したラーメンが目前に置かれた。巷では猫で出汁を取ったと言われているそれ。濁って底の見えぬスープを割り箸でかき混ぜてから勢いよく麺を啜れば、芳醇な味が口いっぱいに広がる。美味と共感の意を示したところで、小津にこの後どうすると問われる。この時の私は、忘れたくもなる4月中の出来事を走馬灯の如く思い出してしまい、折角の充足感が自己嫌悪に変わりつつあった。これから大学に戻り愚行に走る気にもならない。ここは紳士的かつ無難な案を、と思って相手に次の行き先を提案した。)
特にないなら賀茂大橋をぶらり散歩するのはどうだ。
この時間なら人も少なかろう、ちょっとは気分転換になるはずだ。
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