中華娘 2024-03-28 09:57:33 |
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ん……。
(思い切って口を開けば、彼女の方はこういった行為に慣れているのか躊躇いなくドーナツの欠片が放り込まれ。その瞬間、唇に触れそうなほどの距離に彼女の白く細い指があることに微かな緊張が過ぎるも、一度咀嚼すればドーナツのふわふわの食感と苺の甘酸っぱい味が口いっぱいに広がり、表情を綻ばせて。主人が従者に手ずから食べ物を与えられるなど、実家の人間が聞いたら卒倒するだろうな……。そんなする必要もない心配を、人のほとんどいない静かな浜辺で漠然と考えつつ。けれど、親しい人と分け合うドーナツには何物にも代え難い美味しさがあることを、今の自分は知っている。今度は咳き込んで彼女を心配させたりしないよう、一口のドーナツを大事そうによく噛んでゆっくりと飲み込み、それから優しく微笑みかけ)
ああ、美味しいよ。ありがとう、紅鈴。
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