中華娘 2024-03-28 09:57:33 |
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……いいかい?紅鈴。僕の従者であるからには、たとえ君自身であろうと君を粗末に扱うことは許さないよ。それは主人である僕を侮ることと同じだ。心に留めておきなさい。
(やはり、彼女は砂に落ちたドーナツを大人しく渡してはくれないらしい。運動神経で従者に敵うはずがないのだから、いったん伸ばしていた手を引っ込め。どう説明したものかと一呼吸おいた後、まんまるの紅玉を真っ直ぐに見つめ、幼い子供を躾けるようにゆっくりと説明して。ドーナツを捨ててしまうのは確かに勿体無いけれど、彼女はもうスラムの野犬ではないのだと、このクリストファー・レイモンド・シーグローヴのただ一人の従者なのだと、心から理解してほしい。……実家にいた頃の価値観から抜け出せきれない自分に、そんなことを言う資格などないことは分かっているから、せめて心の中で祈りつつ。それから彼女が素直にドーナツを渡してくれることを期待して、自分のドーナツを持っていない方の手を差し出し。けれど自分の提案に対する年頃の少女のような反応にはくすりと笑い、叱るような表情を緩めていつも通りの柔和な微笑みを浮かべ)
……そうかい。じゃあ別の味のドーナツは、今度の散歩の楽しみにしようね。
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