匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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…じどうせいさんき…? ……あ、ああ。アレか。まあ……環境に適応出来ぬ者は居るからの。我とは違って…。
(彼女の発言でピンときた。我はこの女子と会ったことがある──。忘れたくて蓋をしていた記憶が悉に蘇る。あれは数ヶ月ぶりに買い出しに行った日。いつも以上の人混みに酔いながら、時々変化が解けて尻尾が見えそうになりながら、必死で歩きスーパーまで行った日。普段買っているものを手早くカゴに入れ、脇目も振らずレジへと一直線に進んだ。そこで問題が起きた。品物をレジへと通し、いつものように金銭を払おうとした際、店員は「お会計は1番の精算機です」と自動精算機を指さして言った。今までそんなものなかったでは無いか。聞きなれぬ言葉に見慣れない機械。イナリは立ち尽くすより他なかった。かつて人間たちが自分たちの知識や説明などが及ばない領域に対して、それを超自然的現象として扱ったように、イナリにとって機械は人間が生み出した妖怪のように思える。イナリには永遠に理解できない構造で作られているから。呆然と立ち尽くしていた時、一人の女性が操作方法を教えてきた。突然のことに戸惑い、言葉を探している内に女性はさっさと行ってしまったので礼を言うことも叶わなかった。あの時の女性が目の前にいる彼女なのだ。まさかの再会に目を丸くするも平静を装うと、ぎこちなく応答する)
…にしても。そんな瑣末事をよく覚えているものじゃのう。お主、存外ヒマなのじゃな。さっさと忘却の彼方へやってしまえば良いものを。
(二、三回指を擦り合わせると人差し指の先にライターの火程度の大きさの火が灯る。それを火元へ近付けると、あっという間に火の加減が変わった。彼女が料理を作っている内に米を炊こうと釜に米を入れ二、三回水洗いし、竈にセットする。薪を放り込みながら少しばかりの抗議を。いつ彼女が自分だったことに気付くか分かったもんじゃない。彼女のことだからクスリと笑うか、それとも気にしない旨の発言をするか、などするのだろうが、どちらにしても知られたくない。これは尊厳の問題なのだ。自動精算機ごときに良いようにされる九尾の狐。そんな風に思われては沽券に関わる。竈に先程と同じように火を付け、強火で釜の様子を見ながらイナリは自分のプライドを何とか守る方法を考えていた)
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